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第二十八話【団欒】(Vol.271-280)
Vol.271
ユッキーやヨシオは学園で過ごす派。
着替えた後、ゴロンと体を横にして
テレビを見ながら過ごす。
「宿題一緒にせぇ〜へん?」と
ボクが誘っても
「いや、ええわ」と断られる。
怒鳴っても仕方ないし、
まだ関係が作れていない間に
ガッツリとはいけない。
学習する習慣がないのだ。
Vol.272
【習慣】はものすごい力をもっている。
「心が変われば行動が変わる 行動が変われば習慣が変わる 習慣が変われば人格が変わる 人格が変われば運命が変わる」
とはウィリアム・ジェイムズ(心理学者、哲学者)の言葉
運命が変わるのである。
ボクはその初めにある【心】を変えたいのだ。
Vol.273
【心】を変えるきっかけになりたいと
思っていてもどこか空回りしてしまうボク
焦ってはいけない。
夕食までゴロゴロと過ごす
ユッキーを見ながら
“彼らの力になる“と
改めて誓うボクだった。
Vol.274
夕食、入浴を終えると
しばらくはゆっくりとした時間が流れる。
ただ、今日は違った。
そう、この後ボクは
初めての【宿直】なのだ。
宿直までの勤務はこうだ。
21:30 小男が寝ているかチェック
22:30中男をそろそろ消灯準備
23:00消灯
見回り
0:00 職員仮眠
こんな感じだ。
Vol.275
初めては緊張する。
岩兄さんが21時半にやってきて
「兄さん、困ったことあったらすぐに上にきてや」
と声を掛けてくれた。
(ありがたい)
「はい。よろしくお願いします」
お礼を行って、小男部屋へ様子を見にいく。
静かに寝ている子どもたち。
寝顔を見ると ほんとにカワイイ。
Vol.276
おやすみ行事を終えた後は
見回りの23時まで
特にコレと言って用はない、
否、ある!
子どもたちと過ごす時間だ。
一緒にテレビを観たり
ソファーに座って話したり
ホットコーヒーなんかを入れてりしてやる
日頃バタバタとして
慌ただしいからこそ
こんな“ゆっくり“を
あえて意識しするんだ
Vol.277
ホットコーヒーは少しのブームを
起こしつつあった
中男部屋に置いてあるコーヒー
普段誰も飲まない。
そこで、ボクは食堂さんから
砂糖と牛乳をもらってきて
冷蔵庫に置いた。
「何してんの?」と
興味本位のユッキー
「ん?あぁ、コレね。
ホットミルク作れへんかなぁ〜
って思ってさ」
Vol.278
「作ったろか?」
うん。とユッキー
少し甘めに砂糖を入れて
コーヒーの粉は適当
(ガサツさが出てきた)
お湯を注ぎ、後はグルグルとかき混ぜる
ミルクを適当にぶち込んで
「はい完成!」
「ありがとう」
そう言って一口飲んだユッキー
「うまっ!」
(よっしゃ!)と心でガッツポーズ
Vol.279
それを見ていた
ヒロシも
「兄ちゃん!俺も作って!」
「俺も作って!」
とヤスオも続く。
「お、おう!ちょっと待ってな。順番な。」
と応えその後は
コーヒーブームとなったのだ。
きっと
“作ってもらった“ことが嬉しいのだろう。
ボクも
“何かできた“ことが嬉しい。
Vol.280
子どもたちとテレビを観たり
学校での話を聞いたり
まったりタイムを楽しみながら
気がつくと23時前だった。
(ほんと1日が早いな)
そう思いながらも、
「ボチボチ寝よかぁ〜」
と声をかける。
「はーい」と所々で返事が聞こえる。
ボクは
部屋の電気を消して
見回りの準備を始めた。