第二十九話【宿直】(Vol.281-290)
Vol.281
見回りは館内をすべて見回り、
戸締まりと異常がないかのチェックだ。
男子棟から見回る。
三階へ上がり、テラスを見ると
岩兄さんがタバコを吸っていた。
「よろしくね」と片手を挙げながら
美味しそうにタバコを燻らす
「はい」と返事して
見回りスタートだ。
Vol.282
職員の居室を通って
非常口の施錠チェック
トイレを回り、
小男部屋のチェック
裏の洗濯場と裏口
風呂場のチェックへと
テキパキとこなす。
風呂の栓を抜いて、
足拭きマットを固めて置いておく。
(明日の朝一仕事だ)
食堂へと足をすすめると
明かりがついていた。
(誰だろ?)
Vol.283
食堂へ入ると
すでにサトミ姉さんがチェックしてくれていた。
裏口、ガス栓、水回りをチェックした後に
弁当箱の用意をする。
(弁当詰めも朝一の仕事だ)
食堂の棚に置かれている
ご飯の友たちを片付け、
残った洗い物を片付ける。
片付けをしながら
サトミ姉の手際の良さに
驚くボクだ
Vol.283
「早いですねぇ」
驚きを隠せないボクに
サトミ姉は
「こんなん 慣れやで。兄さんもすぐできるようになるわ」
と豪快に答えた。
力強い姉さんだ。
“学園を支える信頼される職員“
が強く感じられた。
(早くボクもそうなりたい)
思いながら、お弁当箱をトレイに並べた
Vol.284
食堂を後にしたボクたちは
新館1階にある保育園の戸締まりもチェックする。
併設されている学園は
保育園さんとのつながりも深い。
玄関に
創立者の自画像が掲げられており
かなりのデカさにお圧倒される。
思わず
「うわっ」と叫ぶぐらいだ。
Vol.285
保育園の戸締まりを確認した後は
エレベーターに乗って六階へ。
こじんまりとしたエレベーターに
二人で乗るのはどうも気まずい。
(“襲われたらどうしよう“と思われていないかな?)
と想像してしまう自分が幼すぎるのだが、
この無言の空気が耐えられない。
NASAの訓練のようだ
Vol.286
エレベーターで6階へ
6階は神殿だ。
神様を祀っている。
祭壇があり、
静かな空間が広がっていた。
礼をして
手を合わせ
神殿に入る。
戸締まりを済ませる。
夜の神殿は
またどこか神秘的な何かを力を感じた。
Vol.287
6階からは階段を降りてチェックだ。
5階は女性職員の居室になっているため
男性は立ち入れない。
サトミ姉に任せて
ボクは4階をチェックする。
4階は理事長、役員の居室になる。
あまり物音を立てないよう
サササとチェックし降りてくる。
3階は心理療法の部屋や
相談室がある。
Vol.288
サトミ姉とは3階あたりで合流となる。
それぞれの場所をチェックした後は
2階に降りて
男子コーナー・女子コーナーに分かれての
宿直となる。
全館の見回りは大体15分で完了となった。
Vol.289
「それでは、この後もよろしくおねがいします」
と一声かけて階段を降りるボクに
「兄さん。初めてやろ?
遠慮せんとなんかあったら言ってね」と
サトミ姉は声をかけてくれた。
「ありがとうございます」
ほんと、ここの職員さんはみんな優しい。
受け入れられていると実感し
感謝した。
Vol.290
宿直室に戻ったボクは
一人壁に背をつけて足を投げ出して座った
上をぼーっと眺めてみると
今日1日が思い返された。
学校の挨拶回りに始まり
授業見学
喫茶店での一杯
小男の宿題チェック
そして、宿直
一日があっという間に駆け抜けていく
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