第七話【食事】(Vol.61−70)
Vol.61
おばちゃんから受け取ったどんぶりに
ご飯を盛る。
湯げがたち
甘い香りがする。
「にいちゃん そんなに食べんの?」
と子供が言った。
「うん。ご飯が好きやねん。」
と答えると
ふ〜ん と言いながら
箸を進めていた。
「いただきます。」
職員も一緒に座って 同じものをいただく。
Vol.62
同じものを
同じ場所で
同じときに いただく
最近の話題や味について
たわいもないことを
話しながら食事をいただく。
あまり
しゃべりすぎると
(早く食べて)
と怒られそうなので
ほどほどにしながら
食事をいただいた。
食べれるって それだけで 幸せなんだ。
Vol.63
やっぱり食事は人を幸せにする。
お腹が満たされると笑顔が溢れる。
お腹が空いていたボクは
すかさずご飯のお替りへ
気がつくとケンタ兄もお替りしていた。
ケンタ兄の体型
それは、これから見られる未来の自分の姿に見えた。
(ダメだ。抑えないと。)
しかし食欲には勝てない。
Vol.64
おかわりをして満足したボク
子供たちも食事を終えて
片付けしていた
片付けは食器を各自で流しへもっていく
お湯がはられたシンクに食器を流しこみながら
「ごちそうさまでした。」の一言。
ボクはそこにもう一言付け足した。
「美味しくいただきました。」と。
Vol.65
食事を終えたボクは子供達と一緒に居室に戻る
階段を上がると、テラスに出る通路が目に飛び込んでくる
ちょうど大人一人が通れるほどの入り口だ
テラスには
洗濯機が3台設置されていて
洗濯物したり、干したりすることができる
Vol.66
また
女子棟(本館)への連絡通路にもなっていて
子供の行き来も盛んだ。
(移動の制限はなく、【勝手に他の部屋には入らない】
がルールになってはいるが)
そのテラスの入り口に
一人佇む男性がいた
岩(ガン)兄さんだ
岩兄(ガンニイ)は小学生男子の担当職員である。
Vol.67
岩兄がテラスの入り口でたたずんでいた。
おもむろに胸ポケットから
赤丸(マルボロ)を取り出した。
箱から1本取り出して
口元に運び、100均ライターで火をつけた。
(えっ、いいんですか!)
そう。ボクもタバコを吸っている。
(今はもう辞めたが・・・当時のボクは吸っていたのだ。)
Vol.68
今では考えられないことだが、
20年は許されていたのだ。
(というか、そんな世の中だったという方が正しいだろう)
岩兄に尋ねた
「兄さん。(タバコ)吸っていいんですか?」
岩兄は答える。
「ええで。兄さんも吸うん?」
「はい。吸ってます」
「じゃー一服しーよ」
「あざす」
Vol.69
タバコに火をつけて一服する
食後の一服はたまらない
岩兄さんが話す
「兄さん。わからんことだらけやと思うから
うん。なんでも言ってや。」
「ありがとうございます。色々と教えてください。」
「うん。うん。気を楽にね。うん。」
・・・
(岩兄さんの口癖は“うん“)
と心にメモした。
Vol.70
タバコを吸いながら考えたことがある。
心の中で呟くボクがいた
(子供にとってこの姿は 良くないよな。)と
中高生男子にとって
“タバコ“は興味のあるアイテムだ。
身体には“悪い“ 悪でしかないのだが、
“大人“というイメージや
“反発“の象徴というイメージがあるからだ。