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第十八話【淡麗】(Vol.171-180)

Vol.171
子供たちに
「おやすみ」と
声をかけて部屋を出る。

「おやすみぃ〜」
と声が上がり、続いて
「また明日!」と返ってきた。

正直嬉しい。

程よい疲れを感じながら、
ボクは階段を上がり、部屋に戻った。

バタン

敷きっぱなしの布団に
なだれ込む。

(ベタなシチュエーション)
だな。



Vol.172
ふぅ〜

1日が終わった。
初日でこんなに大変なものなのかなと実感。

しかし、充実感の方が優っているかな。

これから起きるワクワク感の方が強いかな。

天井を見ながら
今日のことを思い出す。

・・・

たくさんありすぎて
思い出せない。



Vol.173
(ちょっと気分転換しよう)

ボクは施設の前にあるコンビニに出かけることにした。

階段を降りて、中男部屋の横を通る。
玄関を出て、道路を挟んだコンビニへ。

薄暗い夜に眩しいぐらいの明るさで
ボクを誘う

何かないかな?

(買うものはすでにきまっている)

そう!ビール一択!



Vol.174
麒麟淡麗極上生
ロング缶2本

値段も手頃で、スッキリとした味わい。
第3のビールは若干財布に優しい。

アテは、柿ピー

早々に支払いを済ませ、
部屋に戻る。

途中、子供部屋を通るが
サラッと移動。

バタン

ふぅ〜と一息ついた。
(バレずに帰還!)



Vol.175
プシュッ

プルタブを立てた瞬間
福音が部屋に響いた。

ダイレクトでぐびぐびグビっと
3口流し込む。

炭酸が喉を刺激し、
苦味が鼻腔から抜けだす。

ぷはぁ〜〜〜〜
ふぅ〜〜〜〜
はぁ〜〜ぁ

これまでの緊張が
一気に外に溢れ出した。

ようやく一息つけた気がした。



Vol.176
今日1日を振り返ってみた。

食堂での挨拶から
子供とキャッチボール
食事して
風呂入って
引き継ぎ受けて

1日の流れが
なんとなくわかった気がしたが

まだまだ分からないことだらけだな。

時計を見ると
22時を回っている。

「はやっ」

思わず声が出た。



Vol.177
人は集中していると
時間が経つのが早く感じるというが
これは紛れもない事実だ。

(早く寝なきゃ)
と思いつつも

2本目の福音を聴く。

柿ピーを口にほりこみながら
テレビを付けた。

特に何を観るでもなく
眺めながらぼーっと過ごす。

“自分の時間を取り戻す“ような感じだ。



Vol.178
ほろ酔いがすすみ、
まどろんできた。

このまま寝落ちしそうだが、
(歯磨きだけは死守や)と体を起こす。

洗面所に行って歯磨きをしていたら
岩兄さんの部屋が開いた。

「おう!ヒロにいちゃん。今日はお疲れさん。」

ベランダに出て
タバコに火をつけながら
たたずむ岩兄さんだった。



Vol.179
「(今日一日やってみて)どうやった?」

岩兄が尋ねてきた

「すごく慌ただしくて、バタバタしていました。
ただ、子供たちと生活が始まって、いよいよやなって思いました」

と答えると。

「うん。そやな。分からんことあって当然やし。まずはなれることが大事やんな。」

と教えてくれた



Vol.180
【慣れる】
ボクは #心のメモ に書き留めた。

そう。
分からなくて当然。
慣れることで身につくことがたくさんある。

岩兄にお礼を言って
部屋に戻った。

「おう!また明日!」

岩兄はタバコをくゆらしながら
片手を上げて送り出してくれた。

よしっ!
明日もやるぞ!

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