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第九話【接球】(Vol.81-90)
Vol.81
中高生男子の部屋に戻ると
子供たちはゲームの続きをしていた。
次は様子を見ようと
横に座ってプレーを見ていた。
話し方や態度、雰囲気を掴んでいきたい。
まずは何より名前を覚えないと。
と心で呟きながら 視線を一人一人うつしながら
名前を頭の中で唱えてみる。
Vol.82
すぐにでてくるのは、
コウタ なんせ、一番話しかけてきてくれた。
次に、ヨシオ どことなく気になる。
ユッキー
う〜〜ん。
ここまで順調なのに
早く名前がでてこない
そこへ
ユッキーが声をかけてきた。
「にいちゃん。キャッチボールやろう!」
「うん。OK!やろう」
ボクは即答した
Vol.83
“キャッチボール“
いい響だ
男なら憧れる人も多いだろう
“父親とのキャッチボール“
『父親になって息子とやりたいこと』ランキングが
あるとすればベスト3には入るアトラクションである。
ただ単にボールを投げ合いながら
その間に会話する
ほんと、
言葉のキャッチボールでもあるのだ。
Vol.84
ユッキーはボクを誘ってくれた。
これはユッキーがボクに対して
【興味】を示してくれていることだと
受け止めた。
玄関で靴を履き替え、グラウンドに出る。
グラウンドといっても街中に建っている施設のため広くはない。
縦30m×横20mほどのスペース
学校のプールぐらいだろう。
Vol.85
狭いグラウンド?で
キャッチボールをすることになった
といってもすぐにはできない
ちゃんと準備が必要なのだ。
そう
ネットを張って 取り損ねたボールが
建物の窓ガラスに当たらないようにしないといけない
らしい。
ユッキーが教えてくれた。
二人でネットを張りながら
準備を進めた。
Vol.86
ネットを張って
準備完了。
いよいよだ。
「にいちゃんどれ使う?」
ユッキーがグローブをいくつか出してくれた。
「そやなーこれにするわ。」
ボクは、キャッチャーミットを選択した。
ただ単にキャッチボールするだけではなく
最後ピッチングまでできたらいいかなと考えた
からだ。
Vol.87
「軽くウォーミングアップから行こか?
とボクが提案。
「うん。わかった。」とユッキー
二人で初めてのキャッチボール。
3mぐらいの距離から
始めた。
相手の胸を目掛けて
“取りやすいボール“を心がけて
きっとキャッチボールって
“相手のことを考える“ことも大切な要素なんだろう。
Vol.88
さりげに話しかけてみた
「キャッチボールは良くするん?」
「うん。ケンタ兄とね。他のやつとはあまりせんけど、
アツシくんとはたまにするかな。」
「アツシくん?」と尋ねるボクに
うん とユッキー。
聞くとアツシくんは福祉会の理事長のお孫さん。
家族で施設内の敷地に住んでいる。
Vol.89
アツシくんは高3になる
ジュンやヨウイチと同い年だ
ユッキーの話を聞きながら
(まだまだ分からんことが多いな。)
と思いながらキャッチボールを続ける。
だんだん肩が温まり
二人の距離もなはれていく。
けれど、会話が増えるたび
二人の心の距離は近づいているのを感じた。
Vol.90
そろそろ肩も温まってきたな
「にいちゃん。座ってや」
ユッキーがピッチングしたいと言い出した。
「OK」
座ってミットを構える。
バシッ
良い球がとんできた
「良いやん!」
と思わず声が出た
へへっ と笑顔のユッキー
「もういっちょや!」と掛け声を出すボクに
うなずくユッキー