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第十三話【金庫】(Vol.121-130)

Vol.121
さらにケンタ兄の話は続く

5:30 出勤
6:30 起床
7:00 朝食
8:00 送り出し
8:30 掃除
9:00 ミーティング
    終了後<休憩>
14:00 子供迎え入れ
    習い事・学習指導
18:00 夕食
18:30 入浴
21:00 片づけ・掃除
    おやすみ行事
21:30 終了



Vol.122
1日の生活を聞くなかで
このとき、「休憩」が休憩でないことを気づくのに
そう長い時間は必要ではなかった。

ミーティングでは
・予定の確認
・行事の準備
・子供もの様子
・相談事項
などが話される

そして、月に一度
【職員会議】や
【ケース会議】が行われる

(会議が多いな)と呟いた


Vol.123
「そや。ヒロ兄ちゃん ちょっと来て」

思い出したかのように
ケンタ兄が言い出した

ケンタ兄に言われるがまま
ついていくとそこは事務所だった

「これ渡しとくわ。」

おもむろに渡されたのは
カギの束だった

・シャッター
・宿直室
・事務室
・中男金庫

これから必要なアイテムである。


Vol.124
カギを渡されたことで

(職員なんだな。)

という実感が込み上げてきた。

「あと、コレ。」
そう言って渡されたファイルは
児童の措置通知と記録だった。

モロ個人情報を手にしたとき
心が引き締まった。

そこには生育歴から入所に至るまでの経緯、
施設に来てからの記録が記されている。


Vol.125
中男の金庫を開けると
そこには小分けにされたポケットフォルダが丁寧に並べられていた。

子供の名前ごとに分けられたフォルダには
お金が入っていた。

そう

お小遣いだ。

子供たちには毎月お小遣いがある。
年齢によって金額は違うが

“お金の使い方“

を学ぶんだろうなと思った。


Vol.126
お小遣い帳もあり、収支の管理がされている

この他に金庫には、児童の通帳、印鑑が管理されていた

子供たちは、お小遣いが必要になったとき
担当者に(中男はボクか、ケンタ兄になる)
声をかけて、お金を出してもらう

戻ってきたら お小遣い帳を書いて収支をチェック

というシステムだ。


Vol.127
児童台帳を手に取ってみた。

子供一人につき
1ヶ月に1枚

行動記録や保護者対応など
今後に引き継ぐべきことが記録されていた。

しかも

“手書き“で

えっ、この時代に手書き?
今後、毎月これを手書きで書かなければ行けない?

焦ったボクは確認の意味を込めて尋ねることにした。


Vol.128
「兄さん。これってなんで手書きなんですか?」

・・・

一瞬考えてケンタ兄が答えた

「しらん。」

(マジっすか!)

「めんどくさくないですか?」

「そやなぁ〜でも、俺パソコン苦手やしなぁ〜」
と頭をかきながら答えながら、続けて

「これまでこの形やったし、特に変えんでもな」


Vol.129
「変えた方がいいですよ!だって、パソコンでそれぞれが子供の1日を一行でも入力しておけば、提出するとき楽に編集できますよ!」

少し、鼻を膨らませながらボクはケンタ兄に提案した。

「う〜ん。そやなぁ〜。また聞いてみるわ。」

どうも乗り気ではないケンタ兄。


Vol.130
この仕事に就いてすぐに
”変えたい”というのは調子乗りすぎかもと
思いつつも

少しでも仕事が捗るように
提案することは大事だとボクは思った。

心のメモに
【思い切って提案しよう】
書きとめた。

まだまだ覚えることが多そうだ。


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