第十七話【連絡】(Vol.161-170)
Vol.161
“おやすみ行事“では、
・近況報告 や
・行事の予定
・気になること
が話される。
また、
・子供達からの要望 や
・振り返り
なども話された。
ちょっとしたことだが
日々繰り返されることが【習慣】となり、
規則正しい生活につながっていくと感じられた。
Vol.162
ケンタ兄が語り出す。
「えぇ〜今日は、みんなどんな1日でしたか?」
口々に話す子もいれば
黙って下を向いている子もいる。
ケンタ兄は続ける。
「ヒロ兄が来て、まだまだ分からんことが多いから、これからもみんなで教えてあげてな。」
みんな一斉にボクに視線を向けた。
コクリと頷く
Vol.163
「あっ、それと・・・今度、招待行事があって、小学生以上でサーカス観に行けることになったで!楽しみやなぁ〜」
ケンタ兄がサラッと言ったが
ボクは驚いた。
“招待行事“?ってなんだ?
サーカスを観に行く?
どこに?いつ?
なんだか分からないが
行事があるらしい。
Vol.164
「みんなからは、何かないかぁ〜?」
とケンタ兄。
「ない」
「なーい」
「別に」
ポツポツ上がる
反応に応えながら
「よーしっ。
ほんじゃぁ〜今日の
“おやすみ行事“はおしまい。
あとは、消灯まで静かに過ごせよぉ〜」
とケンタ兄は話して終わった。
Vol.165
その後、ボクは
ケンタ兄と宿直室へ移動する。
今日何度、この部屋に来ただろう。
この手狭な空間に
居心地の良さを感じてきた。
ケンタ兄は、ノートを開き
今日1日あった出来事を
書き始めた。
Vol.166
「ヒロ兄ちゃん。あんなぁ
このノートに行事のことや、引き継ぎ事項。
んで、子供の様子で気になることを書いてな。
これまとめて、年度末に児童記録書くことに
なるから。しっかりと頼むね」
ここにきて、何かグッと職員としての
心構えを教えられた気がした。
「わかりました!」
Vol.167
ボクははっきりと答えた。
「じゃ〜今日を振り返ってみるね。」
ボールペンを持ち
B5のルーズリーフに向かうケンタ兄。
・
・
・
・
「特にないな。」
と一言言った後、
ノートを閉じたケンタ兄。
(まぢスカ!)
「兄さん!いいですか?何も書かなくて」
思わず 心の声が漏れた。
Vol.168
ケンタ兄は、詰まったような声で
「まっ、何もない日もあるよね。
何もないということは、平和やったってことや
そやろ?そやろ?どう?」
若干、圧強めで同意を求められた。
「たとえば、○○君は残さずご飯食べました。」
とか
「□□君は、ラスボス倒しました。」
とか書く?
それいる?
Vol.169
「いえ、いらないと思います。」
とボク
「そやろ!そこやねん。だからね、何もない。ということが大事なんやな。」
ケンタ兄の“言いワケ“を受け止めながら
(特にない日は書かなくて良い)
と心のメモに書き留めた。
#心のメモ
Vol.170
「ってことで、今日はおしまいやね。ヒロ兄ちゃんお疲れさん♪」
ケンタ兄が優しく労ってくれた。
「俺は今夜、宿直やから兄ちゃんもう上がってもらっていいよ。明日もあるからゆっくりしてね。」
(優しいな。俺もこんな“兄ちゃん”になりたい。)
そう心から思った。