見出し画像

第十話【一球】(Vol.91-100)

Vol.91
キャッチボールしながら
ユッキーに話しかける。

「ユッキーは何が好きなことは何?」

「なんやろ?わからん。遊ぶことかな。」

「なんか得意なこととかあるん?」

「う〜ん。ないな。けど、空手やってんで。」

「へぇ〜空手やってんねんや。いつから?」

「小学校に入ってからかな。」



Vol.92
話を聞く中で、うちの施設を空手教室して開放してしているそうだ。

毎週火曜・金曜と師範が来て、施設児童や地域の子を指導していることを知った。

「へぇ〜ユッキーって空手してんねんや。すごいやん。」

「まーそーかなー」

なんて言いながらもユッキーはまんざらでもないようだ。



Vol.93
シュン

バシッ

ズバン

シュン

ユッキーが投げる球の勢いが
ボクのミットに伝わってくる。

「兄ちゃん。カウントとって!」

「えっ?カウント?」
と尋ねるボクに

「うん。投げるボールをジャッジして!」

「あぁ〜 そういうことね。OK やろうやろう!」

透明人間との勝負が始まった。



Vol.94
ビシッ

「ストライク!」
「おっ!ユッキーいいやん。ナイスなスタートです。

ビシッ

「ストライクツー!」
「おぉ〜〜〜早速 ツーストライクやで。」

ビシッ

「ストラぁ〜イク! バッタぁ〜アウトぉ〜〜〜〜」
(思わず叫んでしまった。)

「おいおい ユッキーもうワンナウトやで」



Vol.95
やった!と言わんばかりのドヤ顔で
嬉しそうなユッキー。

二人目の透明人間を相手にピッチング

シュルーン
「ボール。おっと、ここでユッキー投手
 ボールがすっぽ抜けたようです。」

などと実況を踏まえながらピッチングを楽しんだ。

ビシッ
「ストライク!」

ズシッ
「・・・ボール」



Vol.96
ここまでカウント1ストライク2ボール

ビシッ

「ットライーク!」

フヘッ
「ボール」

「さぁ〜ユッキー投手
カウント2ストライク3ボール
どうなることでしょうか?
緊張が走ります。」

ズバッ
「ットライクゥ〜〜〜!」
「バッターアウトぉ〜!」

これでツーアウト

鼻息の荒いユッキー



Vol.97
実況を交えながら
二人のキャッチボールは続いた。

その後、調子を崩したユッキーは
立て続けにフォアボール

よくあるパターンのシチュエーションに!

ツーアウト満塁
カウント
 2ストライク
 3ボール

まさしく
“運命の一球“という場面がおとずれた。

息があがってきたユッキー。



Vol.98
まさに運命の一球。

ユッキーの目がミットをじっと見つめる。
まるで、獲物を狙うライオンのようだ。(笑)

セットポジションをとり
足をあげた。

ゆっくりとしたモーションに
彼の想いが伝わってくる。

そして、最後の一球が放たれた。



Vol.99
ホワン ホワン ホワン

スポッ

・・・

えっ。

「ス、ストライク?」

思わず力が抜けた 声でコールするボク。

オイぃぃぃ〜〜〜!

「置きにきたんかい!
 勝負しろよぉ!最後の一球ビシッと!」

「えぇ〜〜〜〜 だって 最後は三振にしたいやん。」

・・・
キモチハ ワカルガ



Vol.100
最後、ここぞというときは
着実に獲りに行く
しかし、その分 相手にもチャンスがやってくる

この駆け引きが大事だとユッキーが教えてくれた

ユッキーの性格が少し分かりながらも
気持ちよく?
キャッチボールを終えた

「ヒロ兄 またやろっ!」

「おう!またやろな」

ユッキーは笑った

いいなと思ったら応援しよう!