トレンドワード
その昔、化粧品系の卸兼メーカーでセールスをやっていた時の話。
当時、
美容室でしか販売していないような高級品質のシャンプーやトリートメントを、勤めていた会社がメーカーとして業界で初めてドラックストアなどに卸すにあたってウリにしていたのが「ノンシリコン」でした。
現在では「ノンシリコン」というキーワードは我々の身の回りでも浸透したワードになりましたが、当時は専門店でしか購入できなかった高級品質のシャンプーとトリートメントがユーザーにとって身近で手に入るという利便性と、企業にとっては自社でしか取り扱えない差別化を「価値」として1本2,000円するシャンプーやトリートメントが"バカ売れ"した結果、その会社は大きく成長しました。
私はここで"マーケティング"の基礎をたくさん学ぶことができました。
例えば「ノンシリコン」というキーワードを聞いたことがある人はそれまでもいたと思いますし、実際にノンシリコンの商品はドラックストアなどで販売していましたが、どの商品もそのキーワードでは訴求せず、機能性ややさしさなどユーザーにとって伝わりにくい、メーカー中心のワードでしか訴求してきていなかったため、中長期的に売れる商品は存在していませんでした。
私が勤めていた企業では商品のTVCMにかける販促費よりも、店頭の販促物や店舗の勉強会に注力して「ノンシリコン」とは何か、なぜ頭皮にいいのかを徹底的に訴求する手法を取って、企業も店舗もユーザーも巻き込んだ商品やブランドに対する"ファン"を作り上げた結果、その後業界内で「ノンシリコン」というキーワードを訴求した商品が爆発的に増える様子を目の当たりにしました。
話は現在に戻り、仕事を通じて業界内でのトレンドワードは常に変化していると感じます。例えば最近だと「DX」もその一つですが、これって誰が言い始めたキーワードなのかふと気になりました。
※おそらく「DX」は経産省が2018年に発表したのをきっかけに流行
現在勤める会社でも数年に1回いわゆる「キャッチコピー」的なキーワードを組織の上の人が掲げて、その度に「キャッチコピー」に沿った施策を我々が考える的な不毛な時間が毎年ありますが、そもそも自分たちも理解できないようなキーワードに振り回されるぐらいなら、まだバズワードでも掲げていた方が自分たちも理解できますし、仕事を依頼してくるお客さんにも伝わるのでは?と思ってしまいます。
考えること、提唱することに生きがいを感じている方々はさておき、少なくとも本気で業界に浸透させたいなら「ノンシリコン」以上に相当な努力をしないとお客さんやユーザーは理解してくれないですし、そんな大義もない気もします。
キーワードに対して中途半端なオリジナリティを出すぐらいなら、いっそのこと業界のトレンドワードに便乗してしまって、上手に活用するぐらいのゆるい考え方のほうがよっぽど有効的な行動や結果に結びつくのになぁというお話でした。