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介護について思ったこと⑬「認知症」と「大人の発達障害」。

 いつも読んでくださる方は、ありがとうございます。
 そのおかげで、こうして書き続けることができています。

 初めて、読んでくださっている方は、見つけていただき、ありがとうございます。
 臨床心理士/公認心理師越智誠(おちまこと)と申します。


介護について、思ったこと

 このnoteは、家族介護者に向けて、もしくは介護の専門家に対して、少しでも役に立つようにと考えて、始めました。

 もし、よろしければ、他の記事にも目を通していただければ、ありがたいのですが、基本的には、現在、話題になっていることよりも、もう少し一般的な内容を伝えたいと思って、書いてきました。

 ただ、現在、気になることがあり、もしかしたら差し出がましいことかもしれませんが、それにについて考えたことを、お伝えしようと思いました。

 よろしかったら、読んでいただければ、幸いです。

大人の発達障害

 最近、「大人の発達障害」もテーマにしたドラマが始まり、この言葉自体が社会にかなり浸透してきたのだと思いました。

 最初に、この「大人の発達障害」という言葉を聞いたときには、かなり違和感がありました。発達障害、というのは、その言葉通りに受け取れば、人間が生まれてから大人になるまでの間に関係することであったはずだからです。

 だから、「大人の発達障害」という言葉自体が、矛盾を含んでいるのですが、いつの間にか定着したのは、この20年ほど、まるで「発達障害ブーム」のような社会状況にあったからだと思っています。

 その状況も、決してプラス面ではないにも関わらず、その言葉を「大人」にまで適用するのは、かなり乱暴なような気がしていました。ただ、そのことによって、気持ちが楽になる方もいらっしゃっるので、マイナス面ばかりではありませんが、どのように支援していけばいいのか、というのは、現在も私も含めて(支援者側にとって)課題が多いと思っています。

「大人の発達障害」の情報

 そして、何より、以前と比べて、「大人の発達障害」はポピュラーになった分、それに関する情報が増え、生意気かもしれせんが、今は「玉石混交」になっていますので、特に最初にどういう人から知識を得ていくかは、大事になっていると思います。

 個人的なことですが、もし「大人の発達障害」について何か知りたいというのであれば、最初の一冊には、精神科医のこの著書↓がいいのではないかと思っています。

診断名がついた瞬間に、その人が何を考えているか、何を感じているかを考えなくなってしまうことはないだろうか。

 こうしたことを考えている著者が、主に支援者向けとしての著書↓も出しています。

 とにかく丁寧で粘り強い診療が必要であることが分かりますし、失敗例まで書かれている凄さを感じました。

 ごく一例ですが、いわゆる「大人の発達障害」として、仕事を見つけることもうまくいかない男性へ、こんな話をし、そのあとは本人の努力もあり、文字通り、道が拓けることもあったようです。

「君の優しい真面目な性格には、福祉の仕事が向いているような気がする。お年寄りの世話をする仕事はどうだろうか、面接ではなく、しばらく手伝わせてもらって、君の働きぶりを見てもらったらどうだろうか」と提案してみた。


「認知症」と「大人の発達障害」

 近年になるほど、介護者支援をしている私にも、「大人の発達障害」という言葉が届くようになりました。

 本来は、子どもに使われることの多いはずの「発達障害」と、高齢者が中心となる「認知症」を同時に診療したり支援できる専門家は少ないのですが、それはある意味では当然のように思っていて、それでもその少なさが、こうした高齢者世代の問題をより難しくしてしまっている、と思うこともありました。

 そのような中、この問題に気づき、「認知症」の専門医が、「大人の発達障害」のことも同時に診療しようとしている例も知りました。(私自身の勉強不足で、これまで知らずにいたのは恥ずかしいことですが)。

 こうした医師の方が増えていけば、確かに救われる方も増大するように思います。

 若い時から年齢を重ねるまで社会に適応をしてきて、高齢となり、さまざまな衰えのために、医療関係者などに関わるときに「大人の発達障害」と診断されるような特性を、ネガティブに指摘されることがある方もいらっしゃるかと思います。その場合に、「大人の発達障害」として正しい診察ができる医師でなければ、診断をや投薬を間違えたり、支援の方法が適切でないこともあり得ます。

 もし、「認知症」と「大人の発達障害」の両方に専門的な知識を持つ医療関係者が増えるほど、確かに、こうしたリスクは減っていくと思います。

「認知症」と「大人の発達障害」への支援

 これだけ「大人の発達障害」の情報が増えているのですから、家族介護者の中にも、介護をされている方(要介護者)が、「認知症」ではなく、どちらかといえば「発達障害」ではないか。もしくは、両方の問題ではないだろうか、と考えられる方が出てきて、おかしくはありません。

 そうなれば、「高齢者」に詳しく、「認知症」のことは専門で、さらには「大人の発達障害」にも詳しい医師や支援者を探したくなるのも自然だと思います。

 ただ、それは前出の記事の中で、当の医師の方が述べられているように、全国的に見たら、とても少ないのが実態です。もちろん、そうした方が近くにいらっしゃって、診療を受けることができれば、適切な対応になりやすいとは思いますが、近くにいない場合の方が、おそらくは多くなるかと考えられます。

 そうした場合にどうすればいいのでしょうか。

 ここからは、これまでの個人的な経験などに基づいた、推測も含めての話になり恐縮ですが、もし、よろしかったら読んでいただき、ご意見なども聞かせていただければ、よりありがたく思います。

これまで高齢者で「大人の発達障害」は存在したのだろうか

 最近になって「大人の発達障害」は一般的になりつつありますが、これまでに、そうした傾向のあるご高齢者が皆無だったかといえば、当然ですが、そんなことはなかったと考えられます。昔から、「対応が難しいご老人」はいらっしゃったはずです。

 そうした方々へ、今の基準で診察や心理検査などを行えば、「大人の発達障害」と診断される場合も少なくなかったと思います。

 そうしたご高齢者に、どうやって対応してきたのかといえば、医療者は「認知症」への疑いを持ちつつも、その時のベストな診療が行われていたと思うのですが、介護の専門家は、「認知症」と「大人の発達障害」の両方の問題を抱えていらっしゃる方に対して、そのように分析的な見方をしていなかったと、推測しています。

「人として普通に接する」

 今でも、優れた介護の専門家ほど、要介護者の方に対して「人として普通に接する」ことをされています。それは、もちろん、さまざまな専門的な情報をもとにして、という専門性があるのは当然ですが、この「人として普通に接する」という原則は、おそらくは優れた介護の専門家であれば、昔から変わらなかったはずです。

 そうであれば、「認知症」と「大人の発達障害」を持つ人、として対応するのではなく、ちょっと難しいところもあるご老人として、その人がより快適であるように工夫して対応し、それが失敗したら、また検討をして対応をする、という試行錯誤を繰り返していたと考えられます。

 ですので、「認知症」と「大人の発達障害」の両方に通じる専門家が近くにいらっしゃらなかった場合は、幅広いご高齢者に対応してきた「優れた介護の専門家」を探した方が、おそらくは早いのではないかと思います。

 ただ、当然ですが、とても困難な状況へ対応できる「優れた介護の専門家」は、どんな職業とも同じく、そんなに大勢いらっしゃるとは思えません。それでも、幅広く介護をされている専門家はいらっしゃいますし、あとは、ご家族(要介護者)との相性のようなものを重視されるのは、いかがでしょうか。

 ご高齢になって、ご本人にも、もちろんご家族にも責任も落ち度もないのに「認知症」になり、その上で、これまでご本人は思いもしなかった「大人の発達障害」などと診断されたら、人によっては、よりショックが大きくなる場合もあります。

 そうしたことが想定される時は、「認知症」の診断は、投薬のことも含めて必要だと考えられますが(ただ、ご本人に伝えるかどうは、ケースバイケースではないでしょうか)、「大人の発達障害」に関しては、無理に診察する必要もないと思うのですが、いかがでしょうか。

 それよりも、その方に合った介護や、医療や、生活があれば、(それが一番難しいとは思うのですが)それがベストだと思っています。


 今回は、特に疑問や、ご意見が多いように感じています。お手数ですが、コメント欄などでそうした言葉を伝えていただければ、こうした支援に関して、より豊かな情報が明らかになると思いますので、よろしくお願いいたします。



他にも介護のことを、いろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでいただければ、うれしいです)。



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越智誠  臨床心理士/公認心理師  『家族介護者支援note』
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