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介護の言葉⑰「老老介護」

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「介護の言葉」

 この「介護の言葉」シリーズでは、介護の現場で使われたり、また、家族介護者や介護を考える上で必要で重要な「言葉」について、改めて考えていきたいと思います。

 今回は、今まで扱わなかったのが不思議なほど、一時期、かなり使われていた言葉ですが、「老老介護」という言葉を改めて考えたいと思います。

「老老介護」

 もっとも「老老介護」という言葉を多く聞いたのは、おそらく2000年代に入った頃でした。

 個人的には、家族の介護を始め、先が見えない状況で、新聞や雑誌やテレビなどで、介護のことを話題にする際に、ほぼ必ず「老老介護」という言葉が出てきて、それは、問題として扱われていた印象が強いです。

 そして、不幸にも、介護殺人介護心中事件が起きたときにも、「老老介護」でした、といったコメントとともに、それ自体が、問題、もしくは原因であるように語られることが、多かったように記憶しています。

 そのころは、仕事を辞めざるを得ない状況で、介護に専念をしていました。私自身は、介護を始めたのが30代後半でしたから、ある基準で言えば、「ヤングアダルトケアラー」と言われることに、それから随分あとに知ることになりました。

 つまりは、「若い」介護者でもあったのですが、それでも、「老老介護」が問題として語られることに違和感しかありませんでした。

 それは、その生活を続ける中で、さまざまな家族介護者の方と知り合うようになり、介護の現場を知るほど膨らむような違和感でした。

「老老介護」は「問題」なのだろうか

 自分自身は、介護を始めて、いろいろな人と出会うたびに「若い」と言われ、社会的には中年が見えてきた頃でしたから、それ自体にも違和感がありましたが、その一方で、確かに同世代で、家族の介護に関わっている人は、ほぼいなかったので、介護者の年齢も基本的には「高い」ものだと分かっていきました。

 それは、ごく一般的に考えれば当たり前のことで、例えば、夫を妻が介護する場合、もしくは夫が妻を介護するときでも、介護が必要になるのは、やはり高齢者と言われる年齢になってからが、多数だと思います。

 そうであれば、夫婦で年代が近い人たちが多数派であるとも考えられるので、高齢者が高齢者を介護する、というのが自然なことだと思っていました。

 また、平均寿命が上がっていく中では、親を子供の世代が介護する場合でも、すでに子供世代が高齢者であることも、おそらくは珍しいことではないと、思います。

 他にも様々な介護をする形はあるとは思うのですが、こうしたことを考えても、介護に関わるほど、「老老介護」は単に事実であって、それ自体が、すぐに「問題」となるわけではないのに、と感じていたので、それを「問題」のように扱うことに違和感がありました。

 もし、「老老介護」が「問題」となるのであれば、「老老介護」の時に生じる「問題」を、なるべく減らせるようなシステムがないことが「問題」なので、そこをきちんと扱い、議論すべきではないか、とずっと思っていました。

 つまりは、高齢者が高齢者を介護するときの負担や負担感を減らせる環境があれば、それは「問題」にならないと考えられます。

「老老介護」とあまり言われなくなった理由

 いつの間にか、「老老介護」という言葉は、あまり聞かれなくなりました。

 理由の一つとして、家族介護という世界を考えたときに「老老介護」が、かなり一般的な事実であるのが明確になってきたので、自然に言われなくなったのかもしれません。

 もう一つは、他の「問題」の方が重大ではないか、と思われるようになったとも、考えられます。

 例えば、2000年から開始された「介護保険」が「改正」という名前で、その運営方法を見直すたびに、その印象は、この20年ほど一貫して、「サービス抑制」でしかなく、同じように介護をしていても、自然に「負担」が増えていくように感じていました。(個人的には1999年から2018年まで、家族を介護していました。介護保険の「改正」があるたび、気持ちが重くなっていました)。

 それは、近年になっても、このような要請書↑が提出されるような状況であり、「介護保険」のサポート機能は、「改正」ごとに下がってきているとしか思えません。


https://www.minnanokaigo.com/news/kaigogaku/no647/

『2021年に介護保険の自己負担が「原則2割」に⁉再び負担増で、低所得高齢者のサービス利用控えが起きる』

 最も最近の「改正」でも、こうした「変化」↑ばかりがあって、サービスがより手厚くなった、ということは、この20年に一度も実感したことがないので「老老介護」のことは話題になりにくくなっているかもしれません。

介護負担の軽減について

 さらに言えば、こうした介護保険の「サービス抑制」が進めば、「老老介護」の状況は、より厳しくなり、今こそ「問題」になる可能性が高まる、と思われるのですが、そうした指摘は、あまり聞いたことがありません。

 基本的には、介護保険の運営が始まってからの20年間は、「介護の社会化」を掲げながらも、徐々に、家族介護者への負担が増える年月だったようにも思います。

 ですから、今の方が「老老介護」を「問題状況」として捉え、その上で、その「問題状況」がどれだけ軽減されるか、ということを本気で考える時期に来ているのかもしれません。

 もちろん「老老介護」と何度唱えても、問題が何も解決するわけではないので、何をするかについて、具体的に考える必要があると思います。

 それは、介護者や要介護者の年齢や、その状況によって、その必要性も変わってくるとは思うのですが、基本的には「介護者の負担や負担感」をどのように軽減するか。

 介護保険の「サービス抑制」が進む中、そのことも並行して考えていかないと、最近、あまり言われなくなった「介護地獄」という言葉だけが、また多く言われるようになってしまうと思っています。




(他にも、いろいろと介護のことを書いています↓。よろしかったら、読んでいただければ、うれしいです)。




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越智誠  臨床心理士/公認心理師  『家族介護者支援note』
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