見出し画像

『「介護時間」の光景』(113)「風」。6.13.

 いつも読んでいただいている方は、ありがとうございます。
 そのおかげで、こうして書き続けることができています。

 初めて、読んでくださっている方は、見つけていただき、ありがとうございます。
 私は、臨床心理士/公認心理師越智誠(おちまこと)と申します。

「介護時間」の光景

 この『「介護時間」の光景』シリーズは、介護をしていた時間に、どんなことを考えたのか?どんなものを見ていたのか?どんな気持ちでいたのか?を、お伝えしていこうと思っています。

 それは、とても個人的なことで、断片的なことに過ぎませんが、それでも家族介護者の気持ちの理解の一助になるのではないか、とも思っています。

 今回も、昔の話で申し訳ないのですが、前半は「2007年6月13日」のことです。終盤に、今日、2022年6月13日のことを書いています。



(※ この『「介護時間」の光景』シリーズでは、特に前半部分の過去の文章は、その時のメモと、その時の気持ちが書かれています。希望も出口も見えない状況で書いているので、実際に介護をされている方が読まれた場合には、気持ちが滅入ってしまう可能性もありますので、ご注意くだされば幸いです)

2007年の頃

 私は、元々、家族介護者でした。

 1999年から介護が始まり、2000年に、母は入院したのですが、私は病院に毎日のように通い、家に帰ってきてからは、妻と一緒に義母の介護を続けていました。

 様々な葛藤がありながらも病院に通い続けて、何年かたった頃、母の症状は安定し、病院への信頼が高まってしばらく経った、2004年の頃、母はガンになりました。手術もしてもらい、一時期は症状も落ち着いていたのですが、2005年に再発し、もう積極的な治療もできなくなりました。

 その後は、外出も増やし、旅行へも行きました。
 2007年の春頃は、明らかに体調が下がってきていました。
 覚悟をしなくてはいけないようなことを病院のスタッフから言われるようになってから、また時間が経ちました。


 そして、5月14日に母は亡くなりました。

 母の死後、いろいろな手続きがあり、あちこちの区役所に行ったり、色々と聞いて、こうすれば大丈夫などと言われ、実際に別のところに行くと、やっぱりダメだったりすることもありました。

 そうした頃の記録ですが、それまでと比べると、記録する文章量が圧倒的に少なくなりました。同時に、すでに詳細が分からなくなっている表現もあります。

2007年6月13日。

「地元の区役所に行く。
 福祉事務所に行ったら、結局、氏名がいることになって、
 あんなに大丈夫と言っていたのに、あー嫌になる。
 ということを表明する。

 大人気なかったけれど、風邪をまたひいたみたいで、調子が悪い」。


 近所に1軒だけの本屋。
 店先に雑誌が平積みになっている。

 けっこう早い風が吹く。
 置いていある雑誌が、一斉に近いのだけれど、明らかにバラバラに、別々のページをめくりあがらせている。グラビアのページくらいまで、めくれて、風が去ると、また戻る。

 本屋の店先は、直線で出来ていて、たくさん雑誌を積み上げてあっても、比較的、整然とした印象になるのに、その動きが時々あるだけで、ひどく雑然として、すごく大騒ぎな感じになっていた。

                         (2007年6月13日)


 その後も、様々な手続きもあり、そのことに追われる日々が続いた。同時に、もしかしたら、義母の介護はあるものの、自分の仕事が再開できるかもしれない、と思った、ごく短い時間があった。

 だが、義母の介護負担は増えつつあり、このままだと妻が過労死してしまう可能性もあると思い、やはり、二人で介護に専念しようと考えた。同時に、介護者支援に自分でも関わりたいと以前から思っていたので、臨床心理士になるため、大学院入学を目指し、勉強を始めた。

 2010年に、大学院に入学し、2014年に臨床心理士の資格を取得できた。同じ年に、幸いにも、仕事として、個別な心理的支援としての「介護者相談」も始められた。義母の介護は続いたが、2018年の末に103歳で義母は亡くなり、介護も突然終わった。

 2019年に公認心理師の資格も取れたものの、午前5時就寝の昼夜逆転の生活を立て直すために思ったよりも時間がかかり、なんとか体調が回復した頃には、コロナ禍になっていた。


2022年6月13日

 このところ、梅雨寒と言われるような日も多く、気温も不安定なので、そのためか、なんとなく妻は体調が優れないようだ。

 今日は天気がいい。

 ただ、天気予報を見たら、明日からまた雨が降るようなので、なんとなく焦るような気持ちで、少し溜まった洗濯物を洗濯機に入れる。

 1回目が終わり、干して、また2回目の洗濯を始める。

コロナ感染

 このところ、新型コロナウイルス感染者数は減少傾向で、そのことに関する報道も減っているように思う。

 どちらかといえば、コロナ対策の緩和の話をよく聞くようになった。

新型コロナウイルスの水際対策緩和の一環で、訪日外国人観光客の入国手続きが再開された。学校での熱中症対策で、政府は、体育の授業や運動部活動中、登下校時にマスクを外す指導をするよう求める通知を、全国の教育委員会に出した。

 それでも、個人的には喘息の持病を持つ家族もいるし、自分の心臓の病気も普段は問題がなくても、完治はしないと聞いていたから、コロナ感染ではどうなるかわからないという不安がある。

 減少傾向とはいっても、今も毎日のように死亡者数は発表されているし、私たちは、若くて健康とはいえないから、とても他人事とは思えないし、これからも外出はなるべく減らしていく毎日は変わらないと思う。

 介護に専念しているときは、社会から孤立している気持ちが強かったけれど、これからは、コロナ感染に対しての警戒心の違いによって、また孤立していくような時間が続くのかもしれない。



 2度目の洗濯を始めてから、昼食を食べた。再放送の予定が乱れて、見られていなかったドラマをやっと録画できた。

 ドラマの中ではマスクもしていないし、人と人との距離も近い。
 こういう日常が戻ってくることは、本当にあるのだろうか。

 洗濯を終えて、洗濯物を干す。
 
 庭にも、強めの日差しがさしていて、小さな花々が咲いている。



(他にも、いろいろと介護のことを書いています↓。よろしかったら、読んでもらえたら、うれしいです)。



#介護    #家族介護者への心理的支援    #介護相談
#心理学   #自己紹介    #家族介護者 #介護負担感
#臨床心理士    #公認心理師   #臨床心理学  

#介護者支援   #通い介護 #コロナ感染対策

#介護負担   #コロナ禍   #ドラマ   #花

#この仕事を選んだわけ   #介護時間の光景

#家族介護者への個別な心理的支援

#支援者   #私の仕事   #不安  





いいなと思ったら応援しよう!

越智誠  臨床心理士/公認心理師  『家族介護者支援note』
 この記事を読んでくださり、ありがとうございました。もし、お役に立ったり、面白いと感じたりしたとき、よろしかったら、無理のない範囲でサポートをしていただければ、と思っています。この『家族介護者支援note』を書き続けるための力になります。  よろしくお願いいたします。

この記事が参加している募集