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『「介護時間」の光景』(158)「家」。5.31.

 いつも読んでいただいている方は、ありがとうございます。
 そのおかげで、こうして書き続けることができています。

 初めて、読んでくださっている方は、見つけていただき、ありがとうございます。
 私は、臨床心理士/公認心理師越智誠(おちまこと)と申します。

「介護時間」の光景

 この『「介護時間」の光景』シリーズは、介護をしていた時間に、どんなことを考えたのか?どんなものを見ていたのか?どんな気持ちでいたのか?を、お伝えしていこうと思っています。

 それは、とても個人的なことで、断片的なことに過ぎませんが、それでも家族介護者の気持ちの理解の一助になるのではないか、とも思っています。

 今回も、昔の話で申し訳ないのですが、前半は「2005年5月31日」のことです。終盤に、今日、「2023年5月31日」のことを書いています。

(※ この『「介護時間」の光景』シリーズでは、特に前半部分の過去の文章は、その時のメモと、その時の気持ちが書かれています。希望も出口も見えない状況で書いているので、実際に介護をされている方が読まれた場合には、気持ちが滅入ってしまう可能性もありますので、ご注意くだされば幸いです)

2005年の頃

 私は、元々、家族介護者でした。

 1999年から介護が始まり、2000年に、母は入院したのですが、私は病院に毎日のように通い、家に帰ってきてからは、妻と一緒に義母の介護を続けていました。

 様々な葛藤がありながらも病院に通い続けて、何年かたった頃、母の症状は安定し、病院への信頼が高まってしばらく経った、2004年の頃、母はガンになってしまいました。

 手術もしてもらい、一時期は症状も落ち着いていたのですが、2005年には、再発がわかり、もう積極的な治療もできなくなりました。

 出来るだけ外出を増やそう、と思っていた頃でした。

2005年5月31日。

 「1日休んで、病院へ行く。

  看護部長に相談をして、内科医との面談ができないかを聞いた。

 そうしたら、3日後の金曜日、午後3時30分には来ます、と言ってくれたので、その時間に会えませんか、というお願いをした。

 母の夕食は40分。

 入院する頃から、急に嫌いになったという高野豆腐を残す。

 明日は、「悪いけれど、また病院来るのを、休むね」ということを母に伝える。

 金曜日の午後3時30分に、医師に相談ができるのが、決まる。

 午後7時には、病院を出る』。

 電車が走る。隣の路線の駅を通り過ぎる。

 あっと言う間でもあるけれど、駅のホームを見ていると、長さもあるから、けっこうな時間のようにも思える。

 ホームの上に、たぶん事務所か何かの建物がある。
 その形、たぶん形だけではないのだろうけど、なんだか「家」の気配を強く感じる。

 他の駅にも、似たような建物があるけど、この駅のは「家」に見えて、不思議と生活感まであるように思えた。もちろん、電車が通り過ぎる時間でしかないけど、何度か通りすぎているのに、同じように思えた。

                         (2005年5月31日)


 気持ちが落ち着かないまま、その生活は続いたが、母は2007年に病院で亡くなった。

 それからも、義母の在宅介護は続けながら、心理学の勉強を始め、大学院に入学し修了し臨床心理士になった。介護者への個別で心理的な支援である「介護者相談」も仕事として始めることができたが、2018年の年末に、妻と二人で在宅介護を続けていた義母が103歳で亡くなり、突然、19年間の介護生活が終わった。2019年には、公認心理師の資格も取得した。昼夜逆転の生活リズムを修正するのに、思ったよりも時間がかかり、そのうちにコロナ禍になっていた。

2023年5月31日

 雨の日が増えてきた。
 梅雨入りのような気配になっている。

 夜中に激しい雨が急に降り出したが、今日は、曇りだけど、雨はあがった。

 気温の上下が激しいせいか、もともとの体が強くないせいか、微妙に体調が良くない気がする。

ケンカ

 妻とケンカになる。

 言い過ぎだと思ったので、あとで、あやまる。

 悲しいので、ケンカしたくないのに、全然、ケンカしない、という関係になるのは、難しいと思う。

電車

 朝から、東横線が運転見合わせになり、さらに、その後、復旧の見通しがたたなくなった、というニュースを知り、微妙に調子が悪いせいもあって、出かけるのは、明日にする。

 在宅で、できることをしていく。ことにする。

 その後、復旧をラジオで知った時は、もう出かける気力がなくなっていた。

柿の木

 庭の柿の木の太い枝から、直接、新しい葉っぱというか、枝に育ちそうなものが、生えてきたのに気がついた。

 このところ、かなり枝を伐採したから、他の場所に葉っぱを新しく生やしてでも、生きていこうとする力を感じた。

 なんだか、すごい。

 必要なものもあって、近所のホームセンターに出かける。

 妻のお姉さんが、容器を贈ってくれたことをきっかけに、梅ドリンク好きな妻は、梅の実を購入した。その量が多かったので、さらに、容器を買おうと思って、出かけた。

 どこにあるかわからなかったので、ホームセンターのスタッフに、保存びんという言葉を使ったけれど、それではピンとこなくて、梅酒、という単語が出た途端、問い合わせをしてくれて、販売しているのがわかった。

 2階です、と言われ、緩やかな坂のようなエスカレーターを登って、売り場を歩いたら、すぐにわかった。おなじみの赤いフタの容器が並んでいて、目的の4リットルは一番上で、下には8リットルまでが、あった。

 なんだか、すごいと思う。

 今日のおわびの意味で、お菓子も買って、家に戻り、妻と録画していたドラマを見ながら、食べて、少しなごんでくれた。





(他にも、いろいろな介護のことを書いています↓。よろしかったら、読んでいただければ、うれしいです)。




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越智誠  臨床心理士/公認心理師  『家族介護者支援note』
 この記事を読んでくださり、ありがとうございました。もし、お役に立ったり、面白いと感じたりしたとき、よろしかったら、無理のない範囲でサポートをしていただければ、と思っています。この『家族介護者支援note』を書き続けるための力になります。  よろしくお願いいたします。

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