これは、勇気です。
ほぼ日の塾5期に参加させていただいた。
予想ではピリピリバチバチな空気かと思っていたけど、しっとりとした緊張感のある、なごやかワクワクな空気感に始終包まれており、リアルイベントの中身すら、ほぼ日らしくデザインされてる~!と感動した。
具体的な塾の内容は割愛するけれど、普段からものすごくほぼ日のファン、というわけではない私も、あ、これは「場の空気」に影響されたね、と思った一幕があった。
「名前」のちから
お昼ごはんは、塾生同士で和気あいあいといただいた。
ライターさんですか?おお、編集ですか!といった職業アイスブレイクや、今までの授業の解釈などが語り交わされ、とても楽しいひとときだった。
そんな中、4人ほどで輪になり、塾参加の動機を歓談していたときに、私の手にもった、ペットボトル入りミネラルウオーターを指さし、
「それは、なんですか?」
と質問してくれた女性がいた。
彼女はもちろん、ミネラルウォーターの存在を知っているし、500ミリリットル容量のペットボトルにも、なんら新鮮味を感じてはいない。
問うているのは、私のペットボトルに装着された、リストバンドのようなものに関してだ。
女性のこぶしより一回り小さいサイズの「くまのプーさん」フェイスマスコットがついた、全体が黄色い、タオル生地製の商品が、私のペットボトルの中ほどに巻かれていた。
正式名はわからないが、他者のドリンクと区別するため、目印の役割を担っているので、まぁ「ペットボトルの目印ですね」であるとか「あ、他の人のと混ざらないようにつけるやつで…」なんて回答したらいいし、普段ならそうしていたはずだ。
ただこのとき、午前の授業を受けた直後であって、私のなかで過去最大に「ほぼ日カラー」が濃くなっていたし、何より、こちらに微笑みかけ続けているプーさんの丸みのある顔に、もう少し特別な名前をつけたくなった。
なので、初対面の相手からの「それは、なんですか?」に、私はらしくない答えをした。
「これは…。これは、勇気です。」
小さな勇者
ペットボトルまとめ買いのおまけとしてついてきたこの商品は、娘が最近気に入っているオモチャのひとつだった。
手首につけ、「アナ雪」を視聴しながら、両手をぶんぶん振り回して歌うのだ。
重さで遠心力がついて、心地よいスピードで回るのか、プーさんなしで腕を回しだしたときは、なんかちがうんだよなぁ~と不服そうな顔をして、歌を中断して探し求めるほどだった。
そんな「お気に入り」のペットボトルマーカーを、塾前夜、私のリュックにゴソゴソ押し込んでいる場面を目撃した。
「むすめちゃん、なにしてんの?」
呼びかけた私を、娘は満面の笑みで振り返り、「プーしゃん、かしてあげゆよ~♪ママ、あちた、だいじだいじよ~♪」とノリノリで告げた。
その日の朝、夫が娘に「明日はお休みだけど、ママだいじなお出かけだから、パパと遊ぼうね。」と話していたことを思い出す。
その場では「え~!ママがいい~!ヤダヤダヤダヤダヤダヤダ~!!」と2歳児特有の盛大な取り乱しを披露していたのに、たった半日で、母の不在を受け止める決意と、送り出すやさしさまで、獲得してしまったのだろうか。
母の「だいじ」に、自分の「だいじ」を添えてみようという娘の発想。
いっておいでと、笑顔で育児を引き受けてくれる夫の存在。
この2人がいてくれたら、なんでもできるような、もっと頑張っていけるような、そんな気持ち。
この胸の温かさには、「勇気」という名前が、ふさわしい気がした。
「これは、勇気です。」
私の家族が、リュックに忍ばせた、大きな勇気なのです。
ちょっとこそばゆい気もするが、そんな私も悪くないかな。
素直でシンプルな名前をつけたい。
そんな気持ちになる塾だった。
記:瀧波 和賀
cakesで育児コラム連載中です^^