note深津さんxけんすうさん「GPT生成AI、その先の未来」《前編》-176号-
2023年6月5日に行われた、尾原和啓氏、深津貴之氏、けんすう氏の「未来予測超会議」の模様を、前・中・後編でお届けいたします。
note深津さんxけんすうさん「GPT生成AI、その先の未来」《前編》
尾原:今日どこかで話したいテーマが、「GPTになって、プログラムがアルゴリズムとデータ構造を作るところだという本質に向き合うようになった」ということです。
これまでの生成AIは、1人がAIに答えを聞くモードでした。でも、AI同士がモジュール間連携すると、こっちもアルゴリズムで考えるし、向こうもアルゴリズムで考えるようになる。だから、「アルゴリズムで動くことを前提にダイナミクスを考えるのが、本来的なエコシステムになっていくはずだ」という仮説があります。
じゃらんのAI検索
尾原:「けんすうさんが最近関心を持っている超未来ネタは何ですか?」という話からしましょうか。
けんすう:未来ネタというわけではないんですけど、じゃらんが「AIチャットでご提案」というのを提供しています。
AIチャットでご提案 - じゃらんnet
尾原:へぇ~、そうなんだ。
深津:よくできていますよね。
けんすう:そうなんですよ。じゃらんのデータベースが、ユーザーの質問を検索しやすいかたちにGPTで処理して、検索結果を出しています。
尾原:はいはいはい。
けんすう:すごくシンプルなんですけど、そうだよなと思いましたね。逆に、ChatGPTのプラグインの食べログで、「渋谷の美味しいラーメンを教えてください」と言ってもぜんぜん変なものしか出ないので、じゃらんのアプローチのほうが確かだなぁと思いました。
食べログ、ChatGPTプラグインの提供を開始 -ChatGPTに食べログのネット予約情報を連携、ChatGPTを使ってネット予約が可能なお店を簡単に検索できます
深津:そのほうがいいですよね。みんな難しいことを考えすぎているけど、単純でいいんですよ。
けんすう:そうなんですよ。「来月の土日で」と言った場合、来月は7月だから「7月〇日」という検索ワードに切り替えて、じゃらんのデータベースで検索していますね。
尾原:なるほど。ユーザーの質問を「じゃらんへのデータベースに投げるとしたら、検索条件は何になるでしょう?」とChatGPTに入れて、確認させるかたちになっているんですね。
けんすう:まさにそうですね。この発想で言うと、いろんなデータベースを持っている企業は、こっちで実装すれば、ヘルシーなわりにユーザーの利便性が高そうだと思っています。
深津:結合レイヤーにGPTを使うということですよね。
尾原:確かに。接着剤としてGPTを挟むわけだからね。Proximity(プロキシミティ)のβ版で「Proximity Pipe」というのがあるんですけど、これがおもしろくて。
まずはユーザーが質問した内容を、検索エンジンでの検索ワードに変換します。それで検索した結果の1ページ目にあるものを持ってきて、文章を要約します。そして、何で絞り込めばいいか、GPTが選択肢を生成してユーザーに入力させて、もう1回結果を出すんです。
けんすう:おもしろい。
検索コスト問題をどうするか?
深津:そのへんってすごくおもしろいんだけど、突っ込みどころが1つあります。「検索のコストをどうやって解決するか問題」って、誰がどうやっているんですか?
僕も机上の空論の企画書では、似たようなアプローチをけっこう作っているんですけど、だいたい「コスト合わんな」で終了になります。
それをどうやって持続可能性をつけるのか。つまり、「ラボプロジェクト」としてやっている分には大丈夫だけど、一般公開して人がワーって来たら死んじゃう、みたいな設計だと思います。
尾原:そうですね。接着剤として検索ワードや選択肢に変換して、そこだけでGPT-4を使っていると、300円くらいかかってしまいます。ユーザーには1往復に見えているけど、実は3往復しているから900円かかってしまう。
けんすう:じゃらんはGPT-3.5でしているのかなと思っていました。
深津:GTP-3.5でも、1~2円くらいかかるじゃないですか。
けんすう:そうですね(笑)。
深津:(例えば)YouTubeは1PV0.1円だから、2円かかったら広告費で賄えなくなってしまうと思います。
けんすう:でも、過去に「1PV700円稼いでいる」という事例をうかがったことがあります。
深津:マジですか?
けんすう:はい(笑)。でも、おっしゃるとおり、検索だとコストがぜんぜん合わない。
深津:アプローチとして持続可能性があるように見えないから、今年の流行で終わってしまうかもしれない。それがちょっと気になるところです。
尾原:でもChatGPTで検索すると、今までのじゃらんの検索では動きにくかった人が動いてくれるから、新規ユーザーの獲得に効きやすいし、ライフタイムバリュー(顧客生涯価値)ベースで見たらユーザー獲得コストが使えます。
例えばじゃらんの場合、宿泊費1泊約9,000円で、手数料10パーセントしか取れないから、売上は900円になってしまいます。だけど、CPA(Cost Per Action:顧客獲得単価)を考慮すると180円程度で収まるから、ライフタイムバリューの高い不動産領域とか就職領域とかには使えるかもしれませんね。
GPTの活用法
深津:僕は、GPTはむしろバックオフィスで使うべきだと思っています。フロントエンドで一切触らせないほうがヘルシーな気がするけど(どうでしょうね)。
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