体を張って実践して分かった「充実した定年後生活」を得るための5要素
私は1966年12月生まれです。本記事を執筆している2024年10月現在57歳です。あと2ヵ月で58歳になります。仕事は100名程度のベンチャー企業の取締役をしています。専門はWebマーケティング支援です。特に、Web解析ツールを利用したWebマーケティングの戦略立案や課題の特定、課題が特定されたあとの改善施策の立案、施策実施後の効果測定などを得意としています。以下の書籍の執筆実績があります。
集中演習 SQL入門 Google BigQueryではじめるビジネスデータ分析(インプレス、2021年)
できる逆引き Googleアナリティクス 増補改訂2版 Web解析の現場で使える実践ワザ 260(インプレス、2017年)
できる100の新法則 Tableau タブロー ビジュアルWeb分析(インプレス、2016年)
わたしが勤務している企業では、取締役に対しては従業員に適用されるような「定年」の規定はありません。そのため、規定により定年退職した訳ではないのですが、2024年10月にそれまでの常勤取締役から、非常勤取締役にしてもらい、心身ともに「現役の第一線」からは一歩退いた境遇になっています。
同年代の友人の中には、すでに定年を迎えた人、定年はまだだけれども役職定年を迎えた人、「もう、この会社では十分働いた」として定年を待たずに退職した人などが現れています。60歳手前というのは、すでに、あるいは遅かれ早かれ現役を退き、定年後の人生にむかう年齢といえます。
同年代の方は同意していただけると思いますが、我々が新卒で企業に就職したときは「良い大学に入って、良い会社に入れば一生安泰」といった「成功の方程式」がまだ信じられていました。職業人生の少なくとも前半戦は、それを信じて頑張ってきたご同輩も多数いると思います。ところが、あれよあれよという間にその方程式は崩れ去り、今は、国も会社も基本的には当てにならず、自助努力で自分のハッピーを実現する時代になりました。
定年後の人生設計についても、一部の大企業では「セカンドキャリアセミナー」などの支援をしてくれる場合もあるでしょう。しかし、基本的には第二の人生をハッピーにするのもしないのも自己責任の時代といえます。考えてみると当たり前のことですが、人によって何がハッピーかは異なるので、画一的な「ハッピーな定年後生活をおくるための方程式」などあるわけがありません。自分で設計し、PDCAを回しながらハッピーを実現していくしかありません。
私は、「定年後の生活をいかに充実させるか」という課題に強い興味があります。そして自分の第二の人生をいかに充実させるかについて、学び、考え、なによりも、考えた内容に沿って実践しています。
そうしているうち「これがあれば、おおよそ誰でも充実したハッピーな定年後生活が送れるのではないか」と思える原則を見つけました。そしてその原則を5つの要素に落とし込みました。この記事では、それらの5つの要素を紹介するとともに、その5要素を満たすための具体的な心構えや現実的な選択肢について私の具体例を交えて解説します。
私の考える、充実した定年後生活を送るための5要素は以下です。
健康であること
居場所があること
お金を稼いでいること
成長を実感すること
熱中できる趣味があること
これら5つの要素は「寿命が100年になる」、つまり、自分も100歳まで生きるということを前提としています。(もし、そうではなく、65歳で死ぬのだとしたら、別の生き方があると思います)。
「人生100年時代」というのは、ロンドン・ビジネススクールの経営学教授であるリンダ・グラットンさんが、書籍『ライフシフト(原題:The 100-Year Life)』(リンダ・グラットン、東洋経済新報社、2016年)で主張していることです。
それでは、ひとつづつ解説していきます。
要素1:健康であること
定年後だけではありませんが、健康であることはハッピーであるために非常に重要です。少々古いですが、平成26年2月の厚生省による「健康意識に関する調査」でもそれがデータで裏付けられています。
以下は「Q5-1.幸福感を判断する際に、重視した事項は何ですか(3つまで)」の回答をグラフにしたものです。定年後の人が多く含まれていると考えられる年齢階級「65歳以上」の回答者において、男女とも対象者の70%以上の人が「健康状況」をあげています。65歳以上で、健康状態が良好なので、自分のことを幸せと感じるという人の割合が多いということを示しています。
では、定年後に健康であるための行動として、どんなことをすれば良いでしょうか?誰でも思いつくのが、「バランスのよい食事」と、「十分な睡眠」と、「適度な運動」ですね。私はその3つに「定期的な検診」を加えて4つが重要と考えています。具体的に私が行っているのは以下です。
バランスの良い食事
私は、今年の7月まで20年以上(少し恥ずかしながら)、基本的に毎晩お酒を飲んでいました。「良くないな、良くないな」とは思いながらもやめられなかったのが実態です。「飲むと仕事にならない」ので、逆に「仕事が終わったという儀式のために1日の終わりには飲む」そんなスタイルでした。
それを今年の7月から、3日に1日程度に節酒することに成功しました。成功の要因は以下の2つです。
記録し、可視化する
「最初の一杯」をノンアルコールビールで始める
1は、一時期流行った?「レコーディングダイエット」の「節酒バージョン」です。以下のようなダッシュボードを利用して、スプレッドシートに記入したデータを見える化しています。8月には飲酒日率45.2%(おおよそ2日に1日の飲酒)で、447gの純アルコールを摂取しましたが、9月には3日に1日のペースに落とし、純アルコール摂取量も347gに減らすことができました。
2については、お酒は「最初の一杯」がとても美味しいのですが、その一杯としてビールを飲むと「今日は飲む日」となってしまいます。そこで「どうしても飲みたかったら途中からビールに切り替えてもいいから、最初の一杯だけはノンアルで」と思って最初の一杯をノンアルコールビールにします。すると、スッと飲みたい欲が減り「今日は飲まない日」となります。ノンアルコールビールの味が美味しくなっていることも追い風です。
私と同じような状況にある人はぜひ、やってみてください。
十分な睡眠
わたしは、睡眠については、以下を目標としています。
睡眠時間は7時間を確保
決まった時間に起きる(=1と組み合わせれば、結果的に決まった時間に寝ることになる)
1、2とも、GARMIN(アメリカの、ハイテクウェアラブルデバイスメーカー)で計測し、可視化しています。以下が8月10日からの4週間のグラフです。就寝時間(棒の上端)は多少バラバラですが、起床時間(棒の下端)は5:30近辺の日が多いです。睡眠時間の平均も6時間52分と目標の7時間に近い長さを確保できています。ある程度、うまく上記の目標1、2を実現できていると思います。
節酒もそうですが、こうした「可視化のちから」を使って、管理・修正をしていくのが効果的だと思います。
定年を迎えると「毎日が日曜日」になり、何時に寝ても、何時に起きても良い生活になりますが、精神科医・作家の樺沢紫苑先生も、こう言っています。
適度な運動
わたしは、犬を飼ってます。来月で3歳になるメスのゴールデンレトリバーです。1日に2回散歩につれていくうち、朝の散歩当番が私です。生き物なので、雨が降ろうが、寒かろうが、暑かろうが必ず行きます。1回20分程度、時々強く引っ張られるのに耐えたりしながら、歩きます。
で、私は、それが「適度な運動」だと思っていました。つまり、自分としては、運動量は足りていると。しかし、どうもそうではないようです。以下の画像はスポーツクラブで測定した体組成です。
同性別、同体格の人の平均と比較して、特に上半身の筋肉がかなり少ないということが分かります。つまり、犬の散歩程度では足はともかく、上半身にとっては「適度な運動」にはならないということです。
加齢による筋肉量の減少は「サルコペニア」と呼ばれます。立派な「疾患」であり、心身が疲れやすく弱った状態である「フレイル」の原因とされています。適切な運動量を自分で決めつけず、こうしたチェックをするのも大事なことだと思います。
定期的な検診
現役時代は、会社から定期健康診断を受けなさいという、案内や指導をもらうことがあったと思います。「忙しいから面倒だな」と思うこともあります。
しかし、定年後はそんなことを言ってくれる人はいません。自分の健康は自分で守るのが基本です。自分で手配して、定期的な健康診断を受けた方が良いです。その時、年に1回など頻度を決めて、できれば同じクリニックで検診を受けるのが良いと思います。同じクリニックだと、前回数値との差異やトレンドをグラフにしてくることがあります。ただの表で数値を確認するよりは断然わかりやすく、数値が良くない場合に危機感を持ちやすいからです。もし、グラフになっていなかったら自分でグラフを作るのも良いと思います。
また、人間ドックのような体の定期検診の他に、歯の定期メンテナンス、クリーニングをすることもものすごくおすすめです。歯のメンテナンスは「虫歯があったら嫌だなぁ」と思って、ついついサボりがちな活動ではあります。ただ、人間ドッグでは口腔内の健康状態は検査してくれません。歯の定期メンテナンスをしないと、場合によっては何年もチェックしない。という状態になってしまいます。気がついたら虫歯だらけ、気がついたら歯周病というのはなんとしても避けたい。
歯のメンテナンスを行うときには、歯医者さん選びにポイントがあります。駅前などアクセスのよい立地で「いちげんさん」の患者さんを集めている歯医者さんは避けることです。そうした歯医者さんは中長期のケアというよりは虫歯を削って治すのがビジネスだからです。そうした歯医者さんではなく「予防歯科」を謳っているような、地元に密着した歯医者さんを選ぶのが良いと思います。私が3ヵ月に一度通っている歯医者さんは、そうした歯医者さんです。10年くらい前の初診のときには唾液の量からチェックしてくれました。その結果から虫歯になりやすい体質かどうかを判断し、口腔ケアにちてのアドバイスをくれました。
要素2:居場所があること
定年前、企業で働いているときには、1日の大半を会社で過ごしたことでしょう。会社は、感じる居心地の良さは人それぞれであっても、一定の「居場所としての役割」を果たしてくれたものと思います。定年後はそれがなくなります。
居場所について、「家庭内」、「家庭外」に分けてどのように居場所を確保したら良いかを考えていきましょう。
家庭内の居場所
家庭もひとつのコミュニティです。すると、そのコミュニティに貢献し足を引っ張らないことが居場所の確保に繋がります。具体的には、家庭内の居場所を確保するための最低限の要件として一つは「役立つ存在となるための自律」、もう一つは「邪魔な存在とならないための自律」という2つの側面を考えると良いでしょう。
役立つ存在となるには、家事を担当すると良いです。そして、その家事を自律的に行います。自律的とは「いちいち言われなくても自分ごととして必ず合格レベルでやる」ということです。食器洗いを担当するのであれば、パートナーから「そろそろ食器を洗ってください」や「食器、ちゃんと洗えてないわよ」と言われたらアウト、ということですね。
家事は大きく分類しても8種類、細かく分類すれば100種類近くもあると言われています。そんな中で、どの家事を担当すればよいか、悩むケースがあるかと思います。基本は、パートナーが苦手な家事を担当するのがよいです。
家事には、人によって、得意な家事と苦手な家事があります。程度の差はあれあなたのパートナーにもそれがあります。パートナーの苦手な家事を担当すると、家庭内の役立ちポイントが高いです。定年を迎え、家庭に「再入社」したあなたは「インターン」のようなものです、担当する家事はなんでも良いのですから、できるだけ得点の高い家事を担当しましょう。
自分の仕事として取り組むのも重要です。自分の仕事なのですから、やるたびにドヤ顔しないのは当然です。担当する家事をやったあと、パートナーからお礼を言われなくなったら一旦合格ではないかと思います。
邪魔な存在とならないための自律とは「自分のことは自分でやる(やれる)」です。例え話ですが、ボランティアの人が被災地に支援で入った時に、被災者の人に「今日の支援活動は終わったのですが、食事の準備をしていないので、ご飯、用意してくれますか?」と言ったらどうですか?自律していませんね。むしろ、足を引っ張っていますね。
あなたが、家庭内でいつも支援が必要な「気にかけて置かなければいけない存在」にならないために、以下の3点ができるようになりましょう。被災者の方は気にかけてもらうべき存在ですが、あなたが家庭内でそうなってはいけません。家庭内での自律的存在になるのです。
衣:自分の服は洗濯し、干し、アイロンをかけられる
食:自分の食事は食材を買い物し、作り、鍋釜や食器を洗える
住:戸締まり、ゴミ捨て、雨戸の開閉、新聞の取り込みなど「家庭としての基礎業務」ができる
パートナーと合意をした家事を自律的にこなし、パートナーの手を煩わせずに家庭内で自律的に生活できるスキルを身につけると、家庭内で居場所を確保する最低限のラインは超えたと思います。
わたしの場合は、2日に1回の朝食後の食器洗い、2日に1回の掃除機かけ、週6回のゴミ出し、週に1回の台所大掃除、1日2回の犬の散歩のうちの1回、1日2回の犬の餌やりのうちの1回、2階のトイレ掃除、を担当しています。
人間力が足りないのでついついドヤ顔してしまいますが、台所の大掃除を終えたあとは、こんな感じです。
それ以上は、パートナーと一緒に楽しめる活動があると良いですね。ドラマを見る、映画を見る、食事に行く、旅行に行くなどを、月に1度か2度一緒にできると、「家庭内での居場所がある」から、「家庭内に友達がいる」状態になれると思います。
家庭外での居場所
これまで仕事に集中していて家庭で過ごす時間が短かったあなたが、週7日24時間家庭にいることは、パートナーの負担になります。「家庭内自律」を実現していればかなりマシですが、それでも負担になると考えたほうが良いでしょう。
もし、家庭外に居場所があれば、時々は出かけたりするでしょう、出かけない場合であっても、「家庭外での居場所」とつながるために個室にこもってZoomで打ち合わせをしたり、資料を作ったりするかもしれません。そうした「個人活動」があることはパートナーの負担を下げます。
また、自分自身にとっても家庭以外に居場所を持つのは、最低限の社会性の維持、程よい対人緊張感の維持、人からの刺激を受けるなど、社会的に孤立しないためにためにとても重要です。定年後のハッピーの度合いに影響を与える要素だと思います。
これまで「仕事一筋」、「仕事が趣味」だった人には定年後、家庭外に居場所を持つのはとても難しいと思います。「定年うつ」のリスクについての日経ビジネスのこちらの記事でも、「何か物事を始めるには、自分から能動的に取り組み、行動しなければならないのに、受け身の姿勢のまま、思い通りにいかないのを自分以外のせいにしてしまう」姿勢が問題だとしています。
そうならないために、「行動にうつす」ハードルが低い取り組みを2つ紹介します。
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