大谷翔平のキャリア形成


転職を考えている。相談者が置かれている状況で圧倒的に多いのがこれです。キャリコンとして注目したいのはその理由です。なぜ転職したいのか。

若い方に多いのが「上司と合わないから」というもの。自分の意見を通すことは不可能。上司の言うことには納得できない。けれど従う他に方法がない。だから転職してものわかりのいい上司の下で働きたい。

転職に至った経緯は人それぞれです。各人ともその経緯を詳しく語ってはくれますが、突き詰めれば上記のようなことです。転職という人生の一大事を決するにはあまりに安易な考えだという印象をどうしても受けてしまいます。

転職しても馬が合う上司に恵まれる保証はどこにもありません。もっと悪くなる可能性だってあります。かといって転職先の上司が自分と合うかどうかを事前に確認する方法はありません。つまりその転職はいちかばちかのギャンブルです。

ではどうしたらいいのでしょうか。今の上司に考えを改めさせる方法などあるのでしょうか。

世界の注目を集める日本人、と言えば大谷翔平でしょう。ロールモデルとするには最高の人物です。

彼の歩んだ道は決して平坦なものではありません。18歳でプロに入り、やろうとしたのは2刀流。野球史において誰も成しえなかったものです。当然、周りの大人たちは誰も認めてくれません。当時の監督だった栗山氏は日ハム入団の条件に2刀流を入れていましたが、現実を見ていずれ本人があきらめるだろうという腹積もりはあったでしょう。

18歳の少年が、30代、40代、50代の偉くて怖いおじさん達にことごとく反対されたら抵抗などできるはずもありません。それでも考えを変えなかった大谷の精神力には驚かされますが、注目したいのは反対意見に言い返さなかったという点です。もとより18歳のつたない表現力ではおじさん達を説得などできようもないでしょう。

大谷は誰も自分をわかってくれないことにフラストレーションを抱えていたと思います。通常なら言い返すことでそのストレスは解消します。大谷がすごかったのはそのストレスを言葉ではなく野球で解消させたということです。

その結果打つことでも投げることでもチームに大きな貢献をしました。そして栗山監督に「うちには両方の大谷が必要だ」と言わしめたのです。

エンゼルスに移籍した後も大谷は投打で起用されました。2刀流は他の選手のスケジュールにも影響します。そのための犠牲は決して小さなものではなかったはずです。

しかし、2021年、大谷は日本でも経験のない「投打フル出場」を果たします。それは大谷が言葉で主張したものではありませんでした。人気取りという側面があったことは否めません。しかしそれ以上に大谷が持つ投打の力をチームが必要としたということでしょう。

現在、エンジェルスは優勝争いから遠ざかり消化試合が続いています。それでも大谷は一人気を吐いています。ヤンキースのジャッジ選手とのMVP争いがファンを魅了しているのです。

それでは相談者さん。もしも、大谷選手をロールモデルとするなら、上司と合わない今の状況をどうしますか?転職を選びますか?

今感じているフラストレーションを仕事にぶつけてみる、というのはどうですか?
仕事にエネルギーを傾け、結果を出せば上司は何も言えなくなります。結果は正義です。それに反する上司の意見は誤りとなります。

転職だけが解決法ではありません。大谷式というやり方があります。それを選択肢に加えてキャリアプランを考えてみるのも一つの方法です。もしも大谷式を採用するなら、それは今の状況を解決につながるだけではありません。それはストレスを仕事の結果に変換するというマジックを身につけるということです。それは今後の人生を大きく左右することになるかもしれないのです。

いいなと思ったら応援しよう!