パーソナルスペース

相談業務をする時に、相談者とキャリコンとの距離は１・２メートルが良い。そんな話を聞いたことがあります。

その半端な数字は何だ？とも思いますが、実は根拠があります。人と人との間には快適と感じる範囲があるのです。その範囲のことをパーソナルスペースと言います。

アメリカの文化人類学者エドワード・ホールはパーソナルスペースを４つに大別し、その距離を明示しました。

密接距離（恋人や赤ちゃん）　いつでも触れられる
0~45cm

個体距離（友人）　　　　　　表情が読み取れる
45cm～1.2ｍ

社会距離（仕事仲間・上司）　声が明瞭に聞き取れる
1.2m~3.6m

公衆距離（他人・通りすがり）攻撃されても逃げられる
3.6m

人生は愛憎劇。人は愛するものと敵とに囲まれながら生きています。そのために適した距離があることがこの数字に表れています。そして空間を創る時に考慮すべき重要なことになります。

レストランなら、テーブルとテーブルの間は3.6m空けたいところ。一緒に食事をする相手とは1.2m。恋人同士が座るカウンターは45cm。

ビジネスの現場なら、同僚との椅子は1.2m以上。会議なら1.2m～3,6m。受付デスクと待合席の間は3.6ｍ以上。という具合です。

日本は狭さを許容する風潮が伝統的にあったためにこうした数字を意識してこなかったのではないでしょうか。そのために無用なストレスで倒れる人が多いのは否定できないと思います。

皮肉なことに、コロナ禍が問題の解消に寄与しているとも言えます。国を挙げてのソーシャルディスタンス運動は、パーソナルスペースの確保につながり、窮屈でせせこましかった日本の様々な施設はたっぷりとパーソナルスペースが確保された空間に変貌しています。適切なスペースを取ることに大切さを多くの人が肌で感じたのではないでしょうか。

オンライン会議が必要に迫られてやらざるを得なかったというのは事実でしょう。しぶしぶ始めたオンライン会議ですが使ってみると便利なことこの上ありません。もはや多くの人がコロナを理由としないでオンラインを選択しています。

ソーシャルディスタンスも同じことが言えるのではないでしょうか。ソーシャルディスタンスだと思って空けていた距離が実は適切なパーソナルスペースだったということもあるでしょう。そういう場所はコロナ後もスペースを確保したままでいることになるかもしれません。

人は一人では生きていけません。かといって集団の中に飲まれるのも耐えられないのです。他人との関係によってちょうど良い距離というものが存在します。遠すぎても近すぎてもダメなのです。相手とどういう関係にあるのかを把握して適正な距離を保つこと。社会の中で生きるためにはとても大切なことです。