フリーター事情~やりたいこと指向~


キャリアはやりたいことを中心に築いていくべきだ。一見、正論に思えます。しかしキャリコンをしていると夢を追い続けるためにフリーターをしている若者に良く出会います。それが20代若い時ならとても理解できますが40代ともなると深刻な問題です。

アイデンティティーの確立は青年期の最大のテーマとも言えるでしょう。確立されない場合、その後の人生に良くない形で影響してしまいます。しかし、経験の少ない時期に自分が何者であるかを自覚することは簡単ではありません。青年たちはそこでもがくわけです。

大学を卒業した新入社員の3割は3年以内に転職しています。この数字は現代の特徴というわけではなく30年前から変わっていません。終身雇用という形態が崩れていると叫ばれていますが、それはとうに始まっています。終身雇用はむしろ特殊な形態だったと認識すべきではないでしょうか。

エリクソンは青年特有のもがきを「社会的遊び」や「役割実験」という言葉で表しました。興味が向くままにいろいろな仕事を体験してみる。体験を通して自分自身の感覚を確かめ、適性を発見していく。それはアイデンティティー確立に必要な道だとも言えるでしょう。

そうした体験も無く確立されるのはどういう場合でしょうか。それは親の価値観や憧れている他者の体験を取り入れたということです。

医師の子が幼いころから親の職業を見て育てば、自分の存在意義を医師に見出すのは自然なことでしょう。

また、強烈な憧れを他者に見出し、自分の存在意義をその場所に見出すこともあるでしょう。

俳優になりたい。ロックミュージシャンになりたい。画家になりたい。小説家になりたい。憧れが先行しやすいこれらの職種の特徴として、極端なピラミッド構造があります。少数のトップランナーが圧倒的な成功を手にする一方、生計を立てられないでいる中間層や底辺層がみえないところに大きく広がっているというピラミッドです。

こうした職業に就くのは大変難しいことです。しかし生計は立てなければなりません。
多くの人が夢を目指す傍ら、アルバイトで生活するというパターンを形成します。

フリーターには良いフリーターと悪いフリータ―という価値観があるそうです。
良いか悪いかを分けるのは夢を持つか否かです。
フリーターでいることは不安を掻き立てます。自分だけでなく家族や知人も含めた不安です。これから未来を築いていこうとする時期に無為な時間を過ごすことを認めることなどできないでしょう。

自分が夢を持っていることは、フリーターでいることを正当化します。
夢に近づいている実感がある限り、その正当化は有効でしょう「夢をあきらめない」
成功者達というのはこの魅力的な言葉を信じ、体現した人のことです。
それがごく少数であることは前述のピラミッドが証明しています。

「やりたいこと」と「現実」は相対するものではありません。共存させるべきもの、双方を生かすべきものです。どちらかを犠牲にして成り立つものだとしたらそれは偽物でしかありません。家族を犠牲にして成功を勝ち得た成功者がいたとしたもそれは憧れの対象にはならないでしょう。

シャインはキャリア構築に必要な3要素を挙げています。
1)やりたいこと 2)やるべきこと 3)できること

やりたいことの実現のためには 2)やるべきことと3)できることの二つの要素をしっかり考えることです。考えたうえで折り合いをつけることです。

折り合いをつけるにはどうすべきでしょうか。
やりたいことの本質を見極めることです。

画家になりたいという人がいたとします。
その本質は何でしょうか。ビジュアルを追求したいのでしょうか。ビジュアル追求に生計という考えを加えれば、デザイナーという職業もあります。何かを表現したいのでしょうか。美容師だって表現者です。企業の広報業務だって表現者です。

やりたいことがあるというのは素晴らしいことです。しかし世に出ている職業名は表面でしかありません。そこを掘り下げて本質を見極め、その本質に見合うものを選択肢に加えて柔軟にキャリアを構築していく。そうした態度が必要です。

キャリアとは個人が作り上げるものではありません。また、親や社会が作るものでもありません。個人と社会双方によって作られ、双方を満たすものとして築かれるものです。

 


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