10分前ルール
時間を守ることは重要な行動規範です。日本の列車の到着時刻の正確さは世界的に有名で、分単位でぴたりと駅に入ってくる電車に外国人は驚きます。時間厳守は日本人の特質と言えそうです。
働く現場においても同様。遅刻は重大なルール違反とみなされ、信用を失う第一の要因。私は派遣会社で面接官をしていたことがありますが、多くの派遣会社ではスタッフに「10分前ルール」を守るように指導しています。中には「定時は遅刻」を合言葉にしているところまであります。定時で遅刻とは素直に従えない所もありますが、そういう心構えでいましょう、ということでしょうね。
さて、面接官をしていて気が付いたことがあります。時間厳守の考え方に男女差があるということです。女性の場合は10分前どころではありません。20分前も普通でしたし30分前も少なからずありました。20分前近くになると、必要書類にはすべて目を通し終わり、心の準備もしていたものです。
一方、男性の場合は勝手が違います。10分前なら早い方。1~2分前というギリギリの時間の方も珍しくありません。応募者が男性の場合は、私の準備もギリギリに済ませるようにしていました。
時間厳守の感覚に男女差があるのは事実です。どちらかと言えば、というような曖昧なものではなくそれは明白な違い。とても興味深いことだと思います。
一体なぜか、考察してみました。
女性は男性より歓待を好むのだと思います。もてなし、もてなされることが嬉しい。逆に言えば、孤独を嫌がり縄張り意識が薄い。その結果早く着くことに抵抗がありません。
一方男性は、早く着けばそれだけ、相手に気遣いをさせることになるのが心苦しい。定刻通りにピッタリ現れるのが美しいと思う。そして迎える人間はこう考えるのです。定刻ピッタリにくる人間は多分、正確な時計を持っているのだろう。任せた仕事もぴたりとこなせるはずだ。スキが無く一目置くべき人物かもしれない。これはないがしろにはできない、などと。
もちろん、すべて幻想にすぎません。けれど、男性とは何でもピッタリとしたものに畏怖を抱いてしまう生き物だという気がします。
そしてもう一つ。むしろこちらの方が重要なのですが、男性には待つか待たせるかに上下関係が絡んでくるということです。上の者は下の者を待たせるもの。遅刻をすれば相手を待たせることになり、下に見ていることの証左になります。では、早くいくことはどうでしょう。
実はこれが同様の心理効果を生んでしまうのです。早く行くほど、自分は相手よりも下だというサインになります。30分も前行くのはかなり下。20分なら下。10分ならやや下というところでしょうか。
相手と同等だというところを見せるために、たとえ早く到着しても時間をつぶして、定時ピッタリにドアを開ける。それが男性という見栄に生きる動物なのです。
約束時間には余裕を持ちたいものとは言え早過ぎるのも相手に負担をかけてしまいます。様々な検証を経たうえでちょうど良かったのが10分前ルールということかもしれません。なかなかによくできた心がけだと思います。