ミスの多い人
「あなたはミスが多いからダメなのよ」「何度同じミスを繰り返すの?」
こうした言葉、頻繁に耳にします。でも本当にミスが多いとダメなんでしょうか。ノーミスであることが優秀さの証明になるんでしょうか。
私はキャリコンの現場でホランドのRIASEC理論をよく使います。私自身が大いに賛同していますし、相談者の評判も良いからです。
この理論によれば人は誰でも「現実的」「研究的」「芸術的」「社会的」「企業的」「慣習的」の6分野の内のどれかに入ります。この中でノーミスであることを前面に出している分野があります。「慣習(Conventional)」です。
反復する作業を正確に処理することにやりがいを抱く人たちで、几帳面で根気強く、協調性に優れていますが、組織を主導するより上の者に従うことを好みます。向いている職業としては、事務員、行政書士、経理マン、スーパーのレジ係、管制塔の職員、パイロット、など。いずれもミスがあったら困る職業ですね。
1文字、1分、1円でも違いがあれば完遂できない仕事です。けれども社会とってはとても重要な仕事。誰かがやってくれなくてはとても困ります。世の中とは良くしたもので、ノーミスで行うことに喜びを感じる人が一定数います。その方々に担ってもらうのが一番ですね。
大事なことはそうではない人たちがいるということでしょう。「慣習的」の対局は「芸術的」ですがこの分野ではノーミスであることを重要視されません。画家、小説家、デザイナー、映画監督といった人にとっては、ミスしたところに新しい発見があるという場合の方が多いほどでむしろ歓迎すべきもにさえなります。
「何度同じミスを繰り返すの?」こう言われて落ち込むのは「慣習的」な職業の人たちであり、それは全体の6分の1にしか過ぎません。さらにこの6分野は企業だけのことではありません。業務にも言えることです。企業は経営、経理、営業、開発、販売など多くの業務から成り立ちます。それぞれが慣習的だったり、研究的だったりと全く違う方向性を持ちます。6分野とは入れ子のようにどの段階にも存在するのです。
日本はノーミスであることが重要視される社会です。おかげで日本の製品は壊れないことにかけて世界一。日本の電車は世界一正確に発着します。
だから、日本の職場では何かと「何度同じミスを繰り返すの?」といった言葉が横行するのですが、ノーミスであることを強要するのはもはや時代に合いません。
「ミスが多い」言われて「ダメ」だと自分を卑下するのも早計です。ミスの少なさが仕事の優劣を決めるとは限りません。あなたはノーミスを求められる仕事に向いておらず、他のことに秀でているのだとしたら、そこで力を発揮すべきです。