最後の大会に向けて
9月からいよいよ秋の大会がはじまる。最終学年である6年生にとっては、小学校最後の大会となる。6年生は4人しかメンバーがいないため、5年生、そして4年生のメンバーまで足して、ようやく9人が揃う。
当然と言えば当然ではあるが、正直4年生と6年生ではレベルが違う。小学生での2学年差は大きく、チームとしてのバランスが他のチームに比べて難しいところがある。
そのため春の大会では、一勝もできずに終わっている。私はよくその辺りの事情は知らないが、昨年のチームが強かったようで、上の大会にも行っていたようで、それと比較されること、そして、上手く下級生をまとめられていないことなどをさんざん指摘されるのを聞いているので、私から見ても、今の6年生は悔しい思いをしているように思う。
それでも、6年生は腐らず、この夏もしっかり練習に参加しているのを知っているだけに、なんとか6年生には最後いい思いをしてほしいなと、個人的に思っている。
話しが変わるが、私が中学3年生の時、ちょうど4月に顧問の先生が異動となり、長年引っ張ってきた野球部を離れることとなった。このことは、地元では話題になるほど大きなことで、私自身もこの先生から2年間教わってきて、集大成である3年生のこのタイミングで、という思いが正直あった。
特に私たちの代というのは、人数も多く、入部前から期待されていたようで、その期待に応えるべく、私たちは秋の大会などでも優勝していた。そして、冬にたくさんトレーニングをして、力をつけて、更なるステージを目指して、という矢先の出来事だったので、なんとも言葉にならない思いだったのを今でも覚えている。
野球部の顧問がいなくなり、代わりがいないため、廃部の危機も一部騒がれたが、その時に廃部にならずに済んだのが、野球部の顧問を引き受けてくれた吹奏楽部の顧問の先生がいたからだった。
吹奏楽部は、野球の夏の試合には毎年駆けつけてくれ、暑い中、楽器を持って応援してくれていた。そこで、顧問の先生も普段私たちが頑張っている姿をみていたのかもしれない。廃部にするというのは酷だということで、顧問を引き受けてくれたのだ。
ところが一つ問題があった。その先生は、野球は好きで外から野球を見たことはあっても、言葉を選ばずに言えば、野球に関していえば「素人」である。ノックも空振りすることも多々あった。
私は、技術的なことはこの先生からは教わらなかったが、その分、今思うと、気持ちの持ちようや心構えなど大切なマインドについて、短い間であったが教わったように思う。野球と音楽。分野は違えども、真剣に向き合ってきたからこそ通ずるものがあるのかもしれない。
その先生から、最後の大会が近づくにつれ、言われたことで今でも覚えているものがある。それが、「負け方」というものだ。
当然私たちは、勝つために練習をしていて、負けるために練習をしていない。最初聞いた時には、ちょっと怒りを覚えたが、よく考えてみると、最後の大会はトーナメント戦だ。その中で、優勝したたった1チームだけが勝って、残りの499校(当時の中学校の数が500校ほどあったと記憶している)が負ける。つまり、確率的にはほとんどのチームが負ける。その時に、「悔いを残す負け方だけはするな」と言ったのだ。
勝っても負けても、この中学という時間は戻ることはない。なので、そこから「悔いは残さないようにしよう」と、意識して練習するようになった。
結果、最後は県大会ベスト8まで行って負けてしまったが、悔いを残さないよう意識してきたので、自然と涙は出なかった。
今の6年生に負けて欲しいとは全く思っていない。むしろ逆で、勝って欲しいと思っている。そのうえで、最後は相手がいることなので、どうしても勝ち負けで線が引かれてしまう。その時に、悔いが残るような負け方だけはして欲しくないと、私も選手から指導者の立場になって改めて思った。悔いが残らなければ必ず次につながる。そのためにまた、彼らのサポートをしていきたい。