鋭い打球を飛ばすには
ある選手から質問を受けた。「目一杯強く振っても、打球に勢いがないんです。打球を力強くするにはどうしたらいいですか。」
素晴らしい質問だと思った。問題意識がないと改善されないので、その選手が疑問に思ったということは成長できる第一歩の証だ。
ちょうどそのころ、6年生が春の大会が一段落して、基礎的な練習をしていた。その練習を見て、私の中でこの質問と一瞬でリンクしたので、ご紹介できればと思う。
その基礎練習というのがこれだ。
実は、練習している小学校にタイヤがあって、そのタイヤに向かってバットを振っていき、インパクト(ボールが当たる瞬間)のところで、「パン!パン!」と当てるというものだった。
これは、おそらくインパクトのところで速いボールに負けないように、ボールの当たるところで強い負荷がかかるようにしているのだろう。
私自身、やったことないとは言わないまでも、この練習をすごくやったという記憶はない。ただ、一般的に野球の基礎的な素振りの練習法として昔からあるので、イメージしやすいかと思う。
そこで、6年生のタイヤの素振りを見ていて、明確に違いがあることに気付いた。それは、バッティングが得意な(打球が鋭い)選手ほど、身体とタイヤの距離が近いのだ。逆に、バッティングが苦手な(打球が弱い)選手ほど、身体とタイヤとの距離が遠く、前で当てていた。
もっというと、身体とタイヤが近い選手は、何回も振れないが、身体とタイヤが遠く前で打っている選手は、何回もバットを振れる。
カンのいい方はもうお気付きかと思うが、タイヤとの距離が近いと、インパクトが強く衝撃が強すぎて、手が痛くなってしまう。それに耐えられなく、何度も振れないのだ。つまり、力の入った状態でバットとボールが当たっているということになる。
逆に、前でタイヤを当てている選手は、力が抜けた後にタイヤとぶつかっているので、それほど手に衝撃がこない。そのため、何回も振れるのだ。
おそらく監督からしたら、あまり振っていない選手はさぼっているように見えるのかもしれない。逆に、ずっと振っている選手はよくやっていると思っているのかもしれないが、私には全く逆の景色として映り、そこに矛盾を感じた。
ここで冒頭の選手の質問に戻るが、この選手のバッティングを見たことなかったが、おそらくボールを前すぎるポイントで打っているのではないか、という仮説を立ててみた。実際、他にも修正できる点があったものの、やはりポイントが前すぎて、前のめりになった状態でボールを捉えていた。
これは、身体の構造上の問題だが、人の力は、自分の身体の中心が一番力が入るし安定する。よく「へその前で打て」なんて表現をされるが、つまりは、来るボールを自分の身体の中心(へその前)にまで引き付け打つと、ボールの捉えるところとしては一番力が入るのだ。
ただし、ボールも動いてくるし、自分も打つときに動くので、そのボールをいつも身体の中心で捉えるのが難しくなる。そのため、何度も何度も確認しながら打つ練習をする。そうやったとしても、10回中3回しっかり打てていいバッターと言われることを考えると、そもそも試合でこちらの自由に打たせてもらうこと自体難しいことなのだ。
それでも、少なくとも自分の力の入るポイントというのは、自分自身で知って、練習で身に付けておかなくてはならない。次回は、そのポイントを知るための、身体の近くで打つ練習法についてお話しできればと思う。
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