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アウトが取れる送球練習法

息子が試合に出場できるために、弱点の1つである、「送球」のトレーニングを開始した。まずは遠投で山なりでなく、ワンバンでも速いボールを投げる訓練をしたが、上手くいかない。そこで、今回はさらにひと工夫した練習法を紹介したいと思う。ここまでに至った前回の記事はこちら↓

ソフトボールを使う

結論からいうと、今使っている野球のボールより重くて大きいソフトボールを使って、前回と同じように遠投を行うというのものだ。遠投といっても、普段使っているボールよりはもちろん短い距離となるが、同じ要領で、低いボールでワンバンで投げるようにする。

当然大きいボールなので、この時は3本の指(人差し指・中指・薬指)でボールを握って投げてもらう。子どもにとっては大きいボールなので、全身を大きく使って投げてもらうよう意識する。これは、明らかにボールに結果が出る。つまり、腕だけで投げると本当にボールがいかないし、逆に身体を使って投げると、子どもでもそこそこボールがくる。これで、ボールに力を伝える投げ方を覚えてもらうのと同時に、少し重いボールで鍛えてもらうことが狙いだ。

この練習法は野球が盛んな国である、ニカラグアでピッチャー同士がソフトボールで遠投をしていたことを思い出し、着想を得たものだ。
もちろんそのピッチャーたちは、大人のクラスであって子どもではソフトボールで遠投をしていなかったが、少しずつ投げ方を覚えはじめた息子だからこそ、この時期に、さらに身体を使った投げ方を覚えてもらいたかったので、取り入れることにした。

中南米にあるニカラグアはキューバの影響を受けているため、非常に野球が盛んだ。日本の相撲とは若干イメージが違うが、間違いなくニカラグアにとって野球は「国技」である。国民全員が野球を知っていて、女の子ですら野球のルールを知っている状況だ。

そんなニカラグアも実は影の部分がある。それは、中南米では最貧国の国であるということだ。私はそのニカラグアで2年間、ボランティアとして野球を教える活動をしていた。私がニカラグアにいた十数年前は、国連が貧困層を定義づけしており、「一日に1ドルの稼ぎがないのを貧困」としていた。(今でもそうなのかは定かではない)
その貧困層がニカラグアでは当時70%以上いると言われていた。

確かに、生活は厳しく、停電はしょっちゅう起きるし、停電だと水も同時に止まってしまう。私がいた街では、最大17日間連続で断水し、14日間身体が洗えないという悲惨な経験もした。
停電になると、夜はロウソクで暮らすしかなく、他にやることがないので、時間だけはたっぷりあった。そこで、自分と向き合う時間はどうしても長くなり、いろんなことを考えるきっかけとなった。

日本と比べれば、間違いなく「経済的には」貧しい国ではあるニカラグアだが、それでも人柄は明るく、こんな状況でも人々はいつも笑っていて、心は豊かだといつも感じていた。私自身、辛い状況の時も、彼らからいつも元気や勇気をもらっていたのを思い出す。こうなると、どちらが貧しいのか分からなくなってしまう。

経済的な状況は、国技である野球にも影響している。もちろん、選手にユニフォームはないのは当然だが、練習にジーパンや短パン、スパイクはおろか靴さえも彼らには高価なため、サンダルや裸足でやってくる。日本だと、ユニフォームが揃っていないとダメと言われたり、スパイクを履いていないと試合に出れなかったり、とやたら規則が厳しいが、ここではそんなルールを作ったら誰も野球をすることができない。

そんなどうでもいいルールよりも、確実なことが存在する。それは、みんな野球が好きでそこに集まっているということだ。そんな彼らに、とてもじゃないけど、「ユニフォームがないとダメだよ」なんて私にはどうしても言えなかった。

グローブも当然一人一個ない。みんな持ち回りで、交代で使っている。
ボールも縫い目が切れて、日本では「危ない」と使われないようなボールを大切に使っている。ファールなどで、どこかに飛んでいけば、みんなで見つかるまで探す。ベースもないので、ペットボトルをつぶしてベース代わりにしている。

ある意味日本の常識が通用しない環境で、生み出されたのが先ほどご紹介した「ソフトボール」の遠投だ。いろんな「不足」の中で、知恵を絞りに絞ってできたであろう練習法を、日本に逆輸入することで彼らに改めて感謝の気持ちを伝えたい。そのためにも、息子に結果を出してもらうよう今日も練習に励んでいく。

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