明日から戦争がはじまる

家の外では工事をしていた。
戦争の準備だ。
長い長い階段を登った所に私たちの家がある。

明日から戦争がはじまる。

けれど私たちには関係がない。
徴兵もされないし被害に遭うこともない。
守られている、とはまた違った空間にいる。
知っているような知らないような家族のような人達と私は長い階段を登る。
後ろは振り返らない。
玄関を開ける、ただいま。
家の中では家族が晩御飯の支度をしている。
明日から戦争がはじまる。
家のドアはガラス張りで、窓みたい。
外はまるで火の海。
火の海を作る工事をしている。
たくさんの作業員たちが船のようなトラックのようなものを動かす、火の海の上で。
家の目の前で工事が行われているのに、工事の音も聞こえるのに私たちはすごく安全なところにいる。
長い長い階段を登って、弟が帰ってきた。
おかえり。
弟は後ろを振り返らない。
私は窓の外をひたすら眺めている。
家は海の上みたいな、天空みたいな、地上から長い階段を登らないと来られない場所にある。
私たちは明日から始まる戦争を、テレビの中みたいな家の外を眺めながらお酒を飲むのだ。
真っ赤な血の海と空が繋がった景色、とても美しい。
長い長い階段はいくら昇っても疲れない。
家族か分からない人達と同じ家に帰る。

明日から戦争がはじまる。


一昨日みた夢の記

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