働きやすさを探す人からつくる人へ
社会人になって8年目。2022年に入社した風と土とは、私にとって4つ目の職場です。業界も職種も雇用形態さえもバラバラな仕事を、文字通り転々としてきました。辞めた理由もさまざまですが、いつも「ここは働きづらい。もっと他に自分が働きやすい場所があるはずだ」と思っていました。
働きやすさとは誰から与えられ、用意されているものであり、完璧で働きやすい職場がどこかにあるんだと本気で思っていたのだと思います。
そんな私が風と土とに入って2年が経ったいま、はっきりと思うことがあります。「そんな理想郷はどこにもない。自分の働きやすさは、自分でつくっていくしかない」のだと。
理想郷を探す先に出会った「ないものはない」
私が風と土とに入社したいちばんの理由は、風と土とが所在する海士町の「ないものはない」という言葉に惹かれたからです。
「ないものはない」は2011年に町がつくった海士町のスローガン。ないのだから仕方がないという意味と、ないというものはない、つまり大切なものは実はすべてあるのだというふたつの意味が含まれています。
この言葉を初めて聞いた時「お前はそこに”あるもの”をちゃんと見ているのか。それを活かせているのか」と問われたように感じました。理想を追い求める私は、どんな職場にいても「これじゃない」とないものねだりをしていたからです。あるものに目を向ければ、これまでの働きづらさや生きづらさを少しでも解消できるのではないか。そう思い、風と土とに入社しました。
そしていま、「ないものはない」のもうひとつの意味が自分にはもっとも足りていなかったのだと気づきました。それは、ないならつくればいい、という意味です。まずはあるものに目を向ける、そしてそれを活かしながら、新しいコトをつくっていく。私の働きやすさも、私がつくっていかなくてはいけません。
正解は、与えられるものではなく私がつくっていけるもの
じゃあ、どうやってつくっていくのか。理想という正解を探していた私がハッとした言葉がひとつあります。
風と土とで行っているSHIMA-NAGASHIというプログラムに参加してくれた、ある企業の事業責任者の方の言葉です。その人は私と経験も立場も何もかも違っていましたが、社長や上司の正解を求めてしまうという点で「とっても気持ちがわかるなぁ…」と感じていました。プログラムが終わったあと、その人が部下に対して「この仕事に正解はない。自分も正解を持っていない。だからこそ、自分たちがやっていくことを正解にしていくしかない」と伝えたと話してくれました。
その話を聞いた当初はその人の変容に驚かされるばかりでしたが、いま改めてその言葉を噛みしめた時に、言葉の重みを感じます。つくっていくのだという覚悟、正解がないことや求める自分を卑下するのではなく「ないならつくるしかない」という、まさに「ないものはない」を体現する在り方。
私は私の働きやすさをつくらなくちゃいけないし、つくっていけるのかもしれない。背中を押されると同時に、その言葉は私の中の勇気になりました。
働きやすさは、私ひとりではなく他者とつくっていくもの
どんな仕事をしていても、働くことはひとりで出来ることではありません。お客さん、会社のメンバー、風と土となら海士町の人たち。いろんな他者と関わりながら仕事をしています。
経験も考え方も大切にしたいと思っていることもまったく違う他者との中で、どうすれば働きやすさをつくっていけるのか。そんな時にも、思い出す言葉があります。
それは、出版事業のアドバイザーをしてくれている元ハーバードビジネスレビュー編集長・岩佐文夫さんの言葉です。岩佐さんが出版企画を考えるときに大切にしていることは「自分のわがままと相手への思いやりを半々に持つこと」だと言います。
このバランスはとても難しいものです。自分のわがままなくしては主体的に何かに取り組めず、相手への思いやりなくしてはひとつのチームとして働き、何かをつくっていくことは出来ない。
正直、ここは私もまだまだ模索中です。それでも、これまで自分のわがままを100%叶えるために生きていた私が「働きづらい」と感じていたのなら、相手への思いやりという視点をひとつ持つだけでも働きやすさをつくっていけるのではないか。他者とつくっていくときに心のとめておきたい、そんな希望を感じる言葉でした。
恩は、返すのではなく送っていくもの
こうして考えると、私は誰かの言葉に支えられ、生きているように思います。うえで話したふたつの言葉以外にも、日々社内からもたくさんの言葉をもらっています。仕事で行き詰ったら話を聞いてくれる。体調を崩すと家に食材を届けてくれて元気になれるメッセージをくれる。足りないところは足りないときちんと伝えてくれる。言葉をもらうたびに、私はひとりで生きていないのだと実感させてもらえます。
そんな風に育ててもらっているという感覚があるからこそ、風と土とに入社し、社会人として初めて「ここで恩返しがしたい」という感情も芽生えました。また言葉の話になるのですが(笑)、学生時代ある方に「恩はその人に直接返すことはできない。だけど、誰かに恩を送ることはできる」と言われたことがあります。
「こんなことをしてもらった。だから私も誰かにこういうことをしよう」その連鎖が恩を送ることなのだと思います。
理想の働きやすさは与えられるものではない。自分で働きやすさをつくっていくことは、働きづらさを感じている誰かへ、これまで私がもらったものを送っていくひとつの手段なのかもしれません。使命と言えば大袈裟ですが、「これは今までの経験を持った私にしか出来ないことかもしれない」そう思えるからこそ、探す人からつくる人へ。そうなっていくことが、風と土とで今も働き続けているおおきな理由なのだと思います。
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