平山駅へ (久留里線)
手持無沙汰な休日だった。
何をしようにも手につかないまま、もう昼下がり。
出掛けよう、考えるよりも先に身体を動かしてしまえばいい。
カメラと最低限のものをバッグに放り込んで、玄関で靴を履いていた。
外に出てから気が付いた。
「充電器を忘れた、まあいいか」
時の流れを変える
数時間後、冬、あっと言う間に夕方になってしまうと思いながら。
いつもとは違う時間の流れる駅に、立っていた。
掲げられた時刻表を見れば、1時間に1本から2本の列車。
窓口に駅員さんの姿はなく、カーテンが閉められたまま。
誰かがいなければいけない古びた空間に、今は誰もいない。
ここは、千葉県の房総半島を内側に向かう #久留里線 の途中駅。
僕の腕時計と、この待合室にある掛時計、同じ時を刻みながら、別の世界を示しながら、少しずつ同じ目線に合わさりながら。
関東に残る数少ない非電化路線の一つ、ホームに出れば、冬の儚い陽射し。
空を遮るものもなく、背伸びしたくなる。
まだ列車が来る気配はない。
向かいのホームは使われていないようだ。レールも剥がされてしまっている。
先の方に見える、あの広い景色を見に行こう、駅から歩いてみよう。
歴史を刻んできた駅を歩き出し、振り返れば、そこにはまた戻りたくなるような静かな佇まい。
のんびりと、気動車が走る
てくてくと歩いて、車の走る国道から曲がれば、ぱっと視界が開けた。
広々とした農地、遠くには房総丘陵の低く穏やかな山並み。
線路は馴染むように、真っ直ぐに延びている。
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