旅とタバコの想い出 / マチュピチュ
東京のハズレの自然溢れる街中で大学生活を送っていた。
当時は美味しいからとかそういう理由ではなく、
単純にお金がないから手巻きタバコでゴールデンバージニアをペロペロ巻いて吸っていた。
お金はなくても意識だけはグングンと成長するもので、海外旅行いかないと死んでしまう!とまでなってる学生は多いと思う。
今のうちに旅行行っとかないとね、みたいなクソみたいな大人からの助言とかもある。
自由に旅行もいけない働き方なんて望んでないぜ。
そんなこんなで大学生アルアルの権化みたいな僕は、やたらと長い夏休みを目前に、一眼レフを抱えて、震える手で南米への航空券を1番安い金額でソートをし、何も考えずに1番安い航空券を購入した。
当時アメリカのカリフォルニアはアーバインあたりに同期が留学していて、夏休み1ヶ月くらい僕もそこで過ごしており、その間、2週間くらいで南米はペルーのマチュピチュへ向かう計画であった。
金もないのにカリフォルニアのさわやかな夏をタバコとビリヤードとビールにまみれて過ごしていた。
ここでお金があって、もう少し身長と筋肉があって、もう少し英語が堪能ならもっと最高なのになぁ、なんて考えていたらまずはペルーはリマへ向けて出発。
工程としては、
ロサンゼルス→リマ→クスコ→マチュピチュ
でクスコ→マチュピチュ以外は空路の予定。
ロサンゼルス→リマはさすが格安航空券を脳みそ無で1番安いでかっただけあってかなりしんどかった。
何故なら直行で10時間もかからずいけるロサンゼルス→リマ経路に72時間かかったからだ。
乗り換えは2回。
エルサルバドル共和国とコロンビアにてそれぞれ30時間くらい過ごした。これはかなりキツかった。
しかもどちらも出国できない、みたいな航空券でただただ空港で外にも出れず(今考えるとそんな事ないよな)。
そんなこんなでペルーはリマ、そこからマチュピチュに向かう列車に乗るためのクスコという街に飛行機で向かう。
やっとこさ到着してまだまだ試練がある。
このクスコという街は標高3,399mあり、降り立った瞬間から高山病の危険性があるのだ。
そして標高が高いと電子ライターが使えないというのは意外と知られていない。
フリント式かマッチを使って火をつけよう。
登山とかでも必ずフリントのライターを持って行かないといざって時に火を起こせない。
高山病を警戒しつつ2〜3日クスコの街をプラつく。
バスで一緒になった老夫婦のアメリカ人は高山病で1週間くらい寝込んだとのこと。
空が高く、空気がひたすら乾燥している。
そんなこんなで列車でマチュピチュ村へ向かう。
さらにお金のないバックパッカーはこの列車も乗らず線路をスタンドバイミー然り歩いて行く。
早朝出発し、マチュピチュ村へ到着。
俯瞰で見るマチュピチュ遺跡は、向かいにあるワイナピチュ山の山頂から見る景色であって、当時ワイナピチュへの入山は入場制限されており、事前に入場券をネットで買っておく必要がある。
色々と金がかかるぜ、ケッ、って感じで入場。
うんうん、まぁそうだよね、と映像や写真を超えない感動を胸に、きっと帰ってみんなに「マチュピチュさいっこうだった!」って言うんだろうなぁと思いながらそれなりに楽しんでいた。
ワイナピチュからのマチュピチュ。
確かに綺麗。
村のゴミ箱も当然マチュピチュと書いてある。
当然ではある。
観光地の遺跡だったりってあまり行く意味ないかなぁ〜って思った旅行であった。
そういう旅行って楽しいし目的もハッキリしていてわかりやすいんだけどね。
ただ、そこに行って何か精神的に疲れたり、学びや悟りの類が横たわっているかと言われるとそうではない。ただただそこにいったという事実と肉体的な疲労が残るのみだ。
やはり旅は精神的にも疲れたい。
あれこれ心配して、考えて、ネットが繋がらなくて、騙されて、お腹を空かせて、深くタバコを吸い込んで旅を続けたい。
チチカカ湖という世界で一番標高の高い湖にも。
確か3800mくらい。
ここもすでに観光地化されていて、世界最高峰の湖に来た、くらいの感想である。
規模がでかい、とにかく。
コカコーラがシェアを奪うことの出来なかったペルーで、圧倒的シェアを誇るのが「インカコーラ」。
こいつをひたすら毎日グビグビと飲んでいた。
インカコーラとタバコ。
そんな旅とタバコの想い出。