恋慕わしく想ふところ。-中の巻ー
1)
姫路の街、“弾丸食いしん坊ツアー”を終えたみはるは、重たい荷物をせっせと担ぎながら、一直線に姫路駅に戻った。
実際、姫路駅から姫路城は一直線なのだ。
天下の名城を売りにしているこの街は、如何にも観光街といった佇まいを見せつつも、地元の方々にとっては普通に生活をしているところ。
それでもやたらとデカイ鞄を持ち、如何にも“よそ者”感をバリバリ出しているみはる達に驚く様子はない。
あぁ、またゆっくり来たい。
お城への真っ直ぐな道をそぞろ歩きたい。
夕暮れになり、急に冷たさが増した風のなか、駅まで辿り着いたみはるは少しばかり“寂しさ”もお供に連れていた。
2)
朝、家を出たのは7時。
もう9時間近く移動を続けているのに、まだ目的地に着かない。
やっぱ遠いわぁ-。
姫路駅から播州赤穂線に乗る。
そう。
目指すところは
赤穂
だ。
播州赤穂線はローカルな路線。
黄色い車体をゆっくりと揺らしながら走る…筈だったのだが。
今回、えぇ!と目を見張るほどに変貌を遂げていた、この電車。
メタリックなシルバーボディ。
冷静に考えれば、みはるの地元を走る電車と殆ど相違ない。
でも、似つかわしくないのだ。
播州赤穂線の電車はいつまでも変わらずに、如何にも郷愁をそそるような、ちんまりとした可愛らしい電車であって欲しかった。
これは、まぁ、みはるの勝手な願望だね。
姫路より先を目指すひとは結構多い。
みはる達は先ず赤穂の数駅前にある網干(あぼし)駅まで下った。
網干駅といえば、この地の銘菓である“はりま家紋”の本店(あれ、工場?)がある街だ。
はりま家紋はホロホロの黄身しぐれでこしあんを包んでいるお菓子。
ちょびっとお高い。
いや、お高くないバージョンもあるのだが、全く同じお菓子なら、ここは頑張ってお高い方を手に入れたい。
その名の通り
家紋がどーん!と刻まれている。
このお菓子のイメージはどっしり、だ。
食べ応えは見た目を裏切らない。
8年も前に食したきりだが、出来ることならもう一度食したい。
確か、姫路の駅ビルにお店があった。
やはり、もう一度この地を訪れる意味はありそうだ…。
と、食い気しかないような妄想をぼんやりと巡らせていたら、つい今し方電車を降りた方角から、あの銀色メタリックが走ってきた。
今度こそ赤穂だ。
こちらの電車は車内の温度を下げないために、自動では開かず、自分でボタンを押して乗り込むモノも多い。
そんなの当たり前
とばかりに自然にボタンを押して乗り込む地元のひとたちに紛れて、みはると同行人はやや疲れた表情で、最後の移動行程を踏んだ。
3)
「もう随分待ってますか?」
タクシー乗り場で後ろに並んだ、可愛らしい女性に声を掛けられた。
播州赤穂駅。
陽もとっくに沈んでいる。
駅に直結したホテルのネオンと、何処にでもある居酒屋のネオン。
目立つ建物はそれくらい。
のんびりとした風景が広がる駅前で、寒さを紛らすように足をぴょんぴょんさせていたみはるは
「うーん…。5、6分位は待ってます。」
と、答えた。
同行人はタクシーが来ないことに焦りを感じていたようだ。
みはるはここまで来たら、もう心配してもしょーがない、と悠然と構えていた。(少しは焦りなさい (((・・;)!)
やがて、漸く一台のタクシーがタクシー乗り場に滑り込んだ。
「宜しかったらご一緒に如何ですか?」
結局一緒にタクシーを待つことになった後ろの可愛いお姉ちゃんに声を掛けた。
「ありがとうございます。是非!」
こんな時に遠慮は不粋だ。
素直に返事をしてくれたお姉ちゃんに清清しいものを覚えた。
「どちらから来たんですか?」
「千葉です」
「うわぁ~都会!」
運転手さんと二人で声を揃えて言われ
「都会じゃないです。全然!」
と、返答を返しているみはると同行人。
実は、先月の博多といい、今回の三ノ宮や姫路といい、その洗練されたスーパーハイソサエティな街並みをしげしげと味わってしまった二人は
“千葉・色んな意味でやべぇ!”
と、若干、己のふるさとに自信を失くしていたのだ。
千葉、もっと頑張らないと!
議会のお偉いさん達、頼むよー!
駅からホテルまでは820円だった。
みはるは千円札を一枚出した。
お釣りを渡してくれようとした運転手さんに
「あっ。いいです。お姉さんのこの先の運賃にしてください。」
そう言って、大きな荷物と共に颯爽と車から降りた。
ねっ?カッコよくない?
みはる達、えれぇカッコよくない?(笑)
旅は道連れ 世は情け
-続くー
みはる
2019´12´18(水)
本日の写メ→播州赤穂駅。改札を抜けて直ぐ目に飛び込んできたでかいポスター。
いよいよ、だね!
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