ルートイン開発訴訟の争点(その2)
本来は、土地利用基本計画の立地基準に適合していない開発行為を、「ただし書」を適用して市長が例外的に許可する。その場合の判断基準は『「開発行為等に関する立地基準」の運用に関する指針』(平成26年11月、篠山市)の「3.開発行為等に関する立地の基準に適合しない場合の個別判断」に定められています。本件開発行為の許可は、この「指針」の判断基準に整合しているでしょうか。
今回は、市の観光施策について考えてみます。
実は、私が副市長を務めていた時期のことですが、篠山市は、平成20年3月に「篠山市観光まちづくりビジョン」を、平成21年3月に「篠山市観光まちづくり戦略」を策定しています。それぞれ10年以上前の計画になりますが、これらを読んでいただくと、このとき既に、市は、従来型の観光振興ではなく、地域の歴史と文化に根ざしたまちづくりを行なって、それを観光に結びつける「文化観光まちづくり」を目指していたことが分かります。
それが、平成21年2月の一般社団法人ノオトの設立へ、同年4月〜11月の「丹波篠山築城400年祭」へ、同年10月の古民家の宿「集落丸山」の開業へ、平成23年1月の「創造農村宣言」へ、平成25年9月の「篠山市創造都市推進計画」の策定へ、平成27年10月の「篠山城下町ホテルNIPPONIA」の開業へ、同年12月の「ユネスコ創造都市」の認定へと繋がっているのです。
この観光まちづくりビジョンと観光まちづくり戦略の計画期間は、それぞれ平成19〜28年度(10年間)、平成21〜25年度(5年間)ですから、これらの計画は役割を終えています。本来、市は、観光施策に関する次期のビジョンや戦略を策定しておくべきですが、それを怠っています。つまり、市は現在、観光ビジョンや観光戦略を持ち合わせていないということです。
さて、「指針」の判断基準として「配慮事項① まちづくりに関する計画等との整合等への配慮」があり、その中で「篠山市土地利用基本計画、篠山市総合計画、篠山市都市計画マスタープラン、篠山市景観計画、その他まちづくりに関する計画等と整合を図ること。」と規定されています。
この規定に関しては、そもそも「土地利用基本計画」の立地基準に適合しておらず、「総合計画」や「都市計画マスタープラン」にも、宿泊特化型ホテルを整備、誘致することについて一切の記述はありません。「景観計画」で規定する軒高、眺望、材料等に関する景観形成基準に抵触しています。そして、上に述べたように、観光施策については、参照すべき計画そのものを持ち合わせていません。例外として開発を認める根拠はどこにもないと考えます。
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