国土計画制度の現状(その1)
何か少し威張ってるみたいで気が引けるのですが、私は最近「国土計画家・コンセプター」を名乗っています。そのことは、まあまあの年齢になったのでお許し願うとして、私には「古民家や文化財の面的開発による地方創生」の事業と合わせて、どうしても道筋をつけたい事案があるのです。
それは、この国の「国土計画制度」を、マトモなものにすることです。
まずは、その現状についてレポートします。戦後、日本の国土計画は、国土利用計画法などに基づく「土地利用計画」制度と、国土総合開発法に基づく「全国総合開発計画」制度によって進められてきました。今回は、このうち「土地利用計画」制度について。
現在の土地利用計画制度は、戦後から1970年頃にかけて制度整備されたもので、国土利用計画法に基づく国土利用計画(国交省所管)のもと、
・都市計画法による都市計画(国交省所管)
・農業振興地域の整備に関する法律による農振計画(農水省所管)
・森林法による地域森林計画(農水省所管)
・自然公園法による公園計画(環境庁所管)
・自然環境保全法による保全計画(環境庁所管)
の5つの「個別法」に基づく個別計画で、土地利用に関する規制(開発行為規制等)を行っています。
しかし、個別法がそれぞれの法律の目的に応じて区域設定及び区域区分を行っていることから、複数の個別法の規制を受ける土地がある一方で、どの個別法にもカバーされない土地も存在するなど計画には相互の整合性がありません。
そして、これらの個別法の上位計画として、本来は相互の整合性を図るはずの国土利用計画が、(後発の法律なので、)個別法の区域設定・区域区分を追認する制度運用になっていて、我が国の土地利用計画制度は有効に機能しているとは言えないのです。
そして、それぞれの制度が都道府県レベル、市町村レベルの地方計画を持っているのですが、事情が上述のとおりなので、例えば市町村の土地利用計画は、目的も手法も異なる個別法の計画制度で色分けされ、重ね書きされ、引き裂かれています。所管省庁の縦割りの弊害が顕著に現れていると言って良いでしょう。
ここでは詳述しませんが、各個別法の土地利用計画制度としての問題点も多数存在していて、結局のところ、開発行為のコントロール機能は非常に弱く、土地所有者や開発事業者の権利を尊重する社会通念とも相まって、ヨーロッパ諸国のように美しく調和のとれた土地利用の実現は、到底望めない計画制度となっているのが実情なのです。
このため、近年、地方自治体において、独自のまちづくり条例を制定して、一元的な土地利用計画制度の整備を図る先進事例が生まれています。
例えば、安曇野市は、2011年に「安曇野市の適正な土地利用に関する条例」を施行し、独自の土地利用ゾーニングとガイドラインにより開発事業の規制誘導を行っています。ガイドラインには、土地利用基本区域(拠点市街区域、準拠点市街区域、田園居住区域、田園環境区域、山麓保養区域、森林環境区域の6区域)ごとに土地利用イメージが示され、建築物の用途、形態、高さなどだけではなく、業種や立地そのものまで規制基準が細かく規定されているのです。
(これは安曇野市というコミュニティ圏域を対象とした「面」とその「質」に関する空間計画であり、適正な土地利用と美しい環境の保全を図る画期的な取り組みとなっています。)
https://www.city.azumino.nagano.jp/uploaded/attachment/22300.pdf
しかし、こうした独自の努力にも関わらず、5つの個別法による計画制度は現存し続けるのであり、実際の開発手続きは非常に煩雑で非効率なものになっています。また、個別法が存在することで、地方自治体が新しく制度設計を行う際に計画の自由度を奪うという弊害も残っています。土地利用計画制度の一元化と地方の自主制度の尊重に向け、抜本的な制度見直しが求められます。
(次回は、全国総合開発計画についてレポートします。)