思考を変えると行動や感情が変化する!不要なエネルギーを消耗させない方法
1.はじめに
ヒラヒラと舞う蝶を見た時「蝶が飛んでいる」そう思いますよね。
鳥と見間違えることもありませんし、羽根が4枚あるから蝶に違いない…なんて考えることもありません。
人間の脳は優秀で認識しているものに対して、瞬時に何であるかを判断することができます。
一つ一つが何であるかを深く考えることをしないので、無駄な思考を省くことでスムーズに日常を過ごすことができます。
物質を瞬時に見分けるために、脳の働きはとても便利な機能といえますが、精神面ではとても厄介な一面を持っています。
人はそれぞれに感じ方や捉え方が違います。
同じできごとを体験したとしても、ある人にとってはハッピーな体験であり、ある人にとっては恐怖の体験でしかないこともあります。
どちらも瞬時に出た感情は正解でも不正解でもありません。
人間の動作には何らかの癖があるように、思考にも癖があります。
そして、何かのできごとに対して瞬間的に浮かんだ考えやイメージを「自動思考」といいます。
思考の癖が歪んだものですと、常に歪んだ自動思考をすることになってしまいます。それによって多くのストレスを感じ、肉体面でも精神面でも不調を起こしてしまいます。
具体的に思考の癖とは、どのような考え方を指すのでしょうか。
また、つらい感情を生んでしまう歪んだ思考の癖を修正する方法はあるのでしょうか。
今回は、自動思考の罠、思考の癖についてご紹介します。
2.自動思考と思考の癖
では、自動思考や思考の癖とはどのようなものを指すのか、もう少し詳しくご説明しますね。
自動思考とは何かのできごとに対して、瞬間的に浮かんだ考えやイメージのことをいいます。
これは自分で意図した考えではなく、自動的に湧き起こる反射的な思考です。
また、心理学の用語でものごとの捉え方や受け止め方を「認知」といいます。
例えば、カブトムシを見た時に、「かっこいい」と思う人もいれば、「怖い」「気持ち悪い」と思う人もいます。
同じできごとを体験していても、どのように認知しているかによってその人の感情や行動に違いが出てきます。
認知はその人が持つ価値観や思考の癖によって自動思考をし、瞬間的にものごとを判断することで私たちの感情や行動に影響を与えます。
この思考の癖が歪んだものですと、自動思考によって意図せずとも次々とつらい感情ばかりが湧き起こってきます。
それによって、精神が不安定になり肉体面にまで悪影響が出てしまいます。
また、思考の癖は潜在的なもので、育った環境や過去の体験などによって作られています。
精神(心)の土台となる部分であり、とても重要な部分であるといえます。このような無意識下の認知をスキーマと呼んでいます。
ネガティブ思考(個人が持っている信念・価値観・思い込み・世界観など)で苦しみを抱えている方は、歪んだ思考の癖を持っていることがほとんどです。(スキーマには2段階ある(浅い部分→中間的信念 深い部分→中核信念)
思考には癖というものがあるということを知るだけでも、自分を修正するヒントを得ることができます。
そして、ネガティブな思考の癖は「認知の歪み」と呼ばれています。
認知の歪みには10種類のパターンがありますので、順にご説明しますね。
3.認知の歪み10種類
① 白黒思考
ものごとを白か黒、0か100かなど、どちらかはっきりさせないと気が済まない考え方です。
少しでもミスがあると「これは失敗だ」と捉えてしまいます。
② 過度な一般化
何の根拠もなく、それが一般的であるという思い込みが強く表れる考え方です。
「みんなそう思っている」「みんなそうしている」「いつもそうだ」
このような考えが過剰に出てきます。
③ 心のフィルター
よいことがあったとしても、悪い部分だけにフォーカスし、ネガティブなことに結びつけることで変換して捉えてしまう考え方です。
とてもラッキーなできごとに遭遇しても、「悪いことが起きる前兆だ」といった感じに受け止めてしまい、しっかりと現実を見ることができなくなってしまいます。
④ マイナス思考
すべてをマイナスに捉え、自分や他人の価値を下げることで悲観的になってしまう考え方です。
これを繰り返すことで負のスパイラルに陥り、苦しみの感情から抜け出しにくくなってしまいます。
⑤ 結論の飛躍
根拠もないのに悲観的な結論付けをし、それ以外の考えを否定してしまう考え方です。
「私は幸せにはなれない」「上手くいくはずがない」など未来に対して明るい期待や希望を持てない考え方です。
⑥ 拡大解釈(破滅化)と過小評価
自分の問題(短所)を大げさに捉え、長所や魅力を過小評価する考え方です。
その逆で他人の成功を過大評価し、他人の欠点を見逃してしまう考え方でもあります。
自分に厳しく他人には寛容な考え方といえます。まじめで優しいタイプです。
⑦ 感情的決めつけ
その場の感情で「嫌だ」「ダメだ」と決めつけてしまう考え方です。
理性ではなく感情で判断したことを「自分こそが正しい」「間違っていない」と決めつけることで、意見が合わない人のことを全否定してしまいます。
⑧ すべき思考
何かにつけて「~すべき」「~しなければならない」といった脅迫的な考え方です。
理想が高くそれにそぐわないものに対して否定的な考えを持っています。
自分の価値観を他人に押し付けてしまうこともあります。
⑨ レッテル貼り(ラベリング)
失敗や挫折をした人(自分・他人)に対してネガティブなレッテルを貼る考え方です。
一度「こうである」と決めつけたことは、簡単には覆すことができないために、ものごとを一面でしか見ることができず、視野が狭くなってしまいます。
⑩ 自己関連付け
自分に関係がないことでも自分に責任があると思ってしまう考え方です。
事実は自分とは全く関係がないのに、「もしかしたら自分がきっかけでこんな結果になってしまったのでは」と考えてしまいます。
「もしかしたら…」の妄想を膨らませることで自分を責めてしまい、自分をダメな人間だと結論付けてしまいます。
認知の歪み10種類のパターンをご紹介しました。
人間は1日に約6万回の思考をし、その中でも80%はネガティブな思考をしているといわれています。
このことからも人間の脳は基本的にネガティブ思考であることから、この10種類のパターンに当てはまる項目が、みなさんにもいくつかあったのではないでしょうか?
【認識】解釈し理解すること 【認知】知覚して認めること
4.思考の癖を修正する
歪んだ認知(思考の癖)を持っていることは、何でもないできごとに対して大きなストレスを感じ続け、心が疲弊してしまいます。
このような状態を改善することはできるのでしょうか。
癖というものは長い期間に渡り習慣的に積み重ねて作りあげてきたものです。
社会・宗教・家庭・教育・メディアなど、さまざまな要素は、繰り返し叩き込まれた情報ですので、心の奥深くに刻印され、自分の認識が誤った認知かもしれないと疑うという発想は少ないかもしれません。
そのために潜在的に刷り込まれた癖は、一瞬で切り替えることは難しいことといえます。
極端な認知の歪みを起こしている場合は、専門家のカウンセリングを受けて治療する認知行動療法というものがあります。
問題点や感情の整理をすることで、どのような認知の歪みを起こしているのか自己分析をし、心の負担を軽減していく心理療法です。
専門家に相談するほど悩んではいない場合は、自分で少しずつ修正をすることもできます。
それには、まず思考には、意図せずとも湧き起こる自動思考があることや、偏った認知をしていることで起きる思考の癖があることを知るということが大切です。
ネガティブな思考ばかりが湧き起こり、自分の考え方が普通ではないと責めてしまうことで、気分はどんどん落ち込んでしまいます。
自動思考によって瞬時に出た考えやイメージには何の罪もありません。
まずは自分の気持ちを自分自身で受け止めて、俯瞰することで感情に振り回されない自分作りをしてみましょう。
また、客観的に自分を観察することで、自分自身にどのような思考の癖があるのか気づくことができます。
思考の癖のほとんどは、偏った思い込みからできています。
ネガティブな思考になってしまったとしても、今の思考は自動思考によって湧き出てきたものと冷静に判断することができます。
この気づきこそが、自動思考の罠から抜け出すきっかけとなるのです。
癖は簡単に修正できるものではありませんが、「できない」という決めつけも思考の癖であり、自動思考によって瞬時に湧き起こる考えなのです。
5.まとめ
いかがでしたか?苦しみの感情は不要なエネルギーを消耗してしまいます。ネガティブ思考は自分を責めることで、更に深い苦しみを生んでしまいます。
自己分析も大切ですが、何よりも自分を大切にし、自分に感謝をして、心に癒しを与えることが一番なのではないでしょうか?