『誰がために醬油差し』秘密警察を宣伝してみる④ #毎週ショートショートnote
*ナディアに
中東のその砂漠地帯の一角には、もともと緑地計画があった。
民間の国際交流の流れで科学者も加わった本格的なものとして
始動したのだが、近隣の内乱により中止されてしまった。
たまたま避難民だった現地のナディアと知り合い恋仲になったが
俺が帰国している間に紛争に巻き込まれた彼女はその命を失った。
今回の名目は現地視察でしかないが、現場の砂漠地帯に立つと
やはり《緑地化計画》は夢物語だった気もする・・・
☆☆☆
ナディアに、日本の食べ物で何が食べたい?と聞いた時
彼女は叶えられない希望だと思ったのだろう
ちょっとだけ寂しく笑いながら
「刺身がたべてみたい・・・」と呟いた。
・・・俺は彼女の願いを叶えた。
新鮮な幾種類かの魚を特殊なルートで空輸で送ってもらった。
俺が目の前で魚をさばいて盛り付けた大皿から
箸でひとつづつ摘まんで、幸せそうに感動した眼で・・・
醤油皿に泳がせてから食べていた。
その時のナディアの笑顔を一生忘れないだろう。
☆
ヘリでその地を去る時に
二人がいた場所に記念にとクリスタルの置き土産をした。
二人だけの大切な想い出だったことはもちろんだが・・・
あとひとつ。
彼女に最後まで秘密にしていたこと。
俺が海外における【秘密警察官】だったことのささやかな
告白の意味も込めていた・・・!!
【愛跡】
*この物語はフィクションであり、実在の人物・出来事・場所
名称・事件等とは一切の関係がありません。
*こちらに参加させていただいてます。
今回のお題は 『秘密警察を宣伝してみる』
裏お題が・・・『響く礼節をペンペンしてみる』でした。