見出し画像

忙しいのにアンニュイ  #青ブラ文学部

お題  「忙しいのにアンニュイ
締切は2024年10月27日(日)

*参加させていただきます。😊



*ドヤの傍を流れる川沿いで


「キミはアンニュイという言葉を知ってますか?」

「・・・なんでぇ! その全身がムズ痒くなるような言葉がどうした?」

最近、俺の暮らすドヤに迷い込んできた爺さんが声をかけてきた。
なんとなく品があるし学もありそうだから、さしずめ・・・
社会からアブれた知識人てとこか?

「んで、その・・・アンニュイとかがどうしたって?」

「あそこに佇んでいる若い娘がいるでしょう・・・?」

爺さんが指差した先の河原に、確かに若い娘が立っていた。

「私の孫なんだとか言い出すんじゃねえだろうな?」

「はは、そんなつもりじゃない。ただ、あの子を見ていて感じたのは
今時の若い子には珍しい・・・静かな雰囲気を感じてね。」

「それがアンニュイってか? それを俺に聞いてどうする?」

「令和の今の時代、《アンニュイ》って言葉を聞かなくなって久しいし
死語になってしまったのかとふと思ってね。キミに声をかけてしまった。」

「ふ~ん・・・、俺だってアンニュイって言葉くらいは聞いたことは
あるけどよ、意味なんて考えたこともねえし基本、どうだっていい!」

「はは、迷惑だったら済まなかったね。」

「迷惑でもねえけどよ・・・今日は久々に日銭の仕事が入ってるからよ!
もうじき出かけにゃなんねえのさ。」

「おぉ、そうでしたか。それは申し訳なかった!
どうぞ気にせずに出発してください!」

おう、行くぜ!


俺は爺さんを残して
仕事先に行くバスがくる場所に向かった。

去り際に、河原に佇む女の子を見つめる爺さんの
少しだけ寂しそうな眼が気になったが・・・知るかいっ!

せいぜい、アンニュイを感じながら永遠に・・・
変態爺さんの目線に気付いたアンニュイ娘が逃げ出すまで
見てやがれっ!! 

まったく・・・


忙しいのにアンニュイだぜ!!




【了】

(717字)



*このお話はフィクションです。😅


#青ブラ文学部
#ショートショート





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?