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『風に誘われて・・・』ぼくはくま #青ブラ文学部
*参加させていただきます。宜しくお願いします。🐻
*風に誘われて・・・
ぼくはくま。 熊だ。
今年にかけての熊穴の中で妹と共に産まれた。
ぼくも妹も母を選んで来た。
ヒグマの雲の世界で昔からの様々な話を聞いた。
北海道の山や森でエゾオオカミが生きていた時代・・・
王者のように誇りを持って生きていたヒグマたちの話には
憧れがあった。
ぼくもヒグマとして生きてみたいと思った。
でも、ヒグマの先輩には止められていた。
ヒグマが堂々と生きていける時代は終わったのだと・・・?!
もうヒグマが生きていける場などないのだと聞かされていた。
それでもぼくは母を選んでここに来た。
妹は少しの間だけならと一緒にきたけど、すぐに死んで
雲の世界に帰ってしまった。
☆☆☆
冬眠を終えて熊穴から出たぼくは
母に様々なことを教わりながら 新鮮な春の山と森を楽しんだ。
フキやウドやセリ、ドングリやザゼンソウを食べた。
夏には野草の他にもアリやザリガニ、セミの幼虫、それに
スズメバチの味も覚えた。
秋には食べ物が豊富にあって美味しい木の実もいろいろ・・・
遡上したサケを獲る母を尊敬したし、その美味しい味に感動した。
それでも、母は少し残念そうに言った。
「昔にはね、もっと美味しいものがいっぱいあったんだって。
水の味も変わってきたし、雨の匂いも違う・・・
何より《危険な人間たち》も少なかったしね。
知り合いの熊たちもみんな 殺されて・・・」
そう言っていた母は
新しい餌場を探しに出かけたまま帰ってこなかった。
遠くから聴こえた音が《銃声》なんだと知った。
ぼくはひとりで生きるしかなかった。
☆ ☆ ☆
ぼくは・・・人間たちの匂いや銃から逃れて4年 生きた。
雲の世界で聞いた話と合わせても頑張った方だと思う。
誇りを求めて山や森を支配しようとしたけど
先輩や母と同じ運命を迎えた。
やはり、人間の銃に撃たれて動けなくなった。
それでもぼくは死んではいない・・・
いつも一緒だった《風》の声が聴こえた瞬間に
ぼくも風になっていた。
雲の世界に帰る前に ぼくはこの大地で
山で 森で・・・
誇りを持って生きることを決めた。
ぼくは今、北海道の自然の中で自由に
《 かぜのくま 》として
生きている・・・・・・!!
【了】
(871字)
*このお話はフィクションです。🐻