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青春漫画抄(昭和)⑬
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*《 佐藤プロダクション 》
私は予定通り
高田馬場にある『佐藤プロダクション』に就職した。
秋田から来た「H君」「S君」の2名(知り合い同士)。
宮城からは「T君」。そして「私君」を加えた
合計・何故か4名・・・である。私がもっとも遅い参加であった。
私達4名は職場に住み込みで働く事となったが
場所は駅にも近い高台にある近代的な雑居ビルで
(・・・こ、これがプロの職場なんだ?!)
と、圧倒されていた。
先生である『佐藤まさあき』は当然、仕事場へは通いであり
他の関係者4名も通いである。そして実質
プロダクションを運営している先生の実兄・K氏・・・
(この職場に関わる人物は先生以外すべて仮名とします)。
2年先輩で、すでにプロデビューもしているチーフのM先輩。
やはり先輩女子のK子(この人は仕事には参加しない)。
そしてもうひとりの女性スタッフ・E子。以上である。
挨拶も早々に、翌日からさっそく仕事の開始となった。
向かい合わせに並べたそれぞれの机に座る。
同時就職とはいえ数日前から先に仕事を始めている同僚には
すでにプロのオーラが放たれて見えた。
( 負けるものか・・・!!)
当然、先生が原稿に向かいペンを走らせる姿こそが
真実のオーラを発して神々しいほどである。
( こ・・・これがプロなんだ?!)と、初(うぶ)な私。
締め切りに追われる緊張感の中でも
先輩達と同僚の会話も弾み・・・基本、明るい職場であった。
少しずつ作業にも慣れてきて・・・この職場に来て良かったと思った。
*《 真っ赤な買い物カゴ 》
同期の私達4人には、買い物当番と炊事当番があって
自分達の食事は自分達で賄っていた。
だが、ちょっと恥ずかしい事もあった。
時間帯は夕方
ちょうど早稲田の同年代の学生達の帰宅の時間と重なり
商店街で行き交うこととなる。
自意識過剰かとも思うが
彼らからの、どことなくニヤけて見下す目線・・・☆
だが、高卒だからって卑下することは無意味である。
自分は彼らよりも、もっと夢に満ちた勇者なのだ!
大根や長ネギを入れた「真っ赤な買い物カゴ」を
堂々と下げて、前進すればいい!!
*《 貸本屋の世界 》
北海道の地元で貸本の知識もなかった私は同僚達に責められ
その世界がいかに素晴らしいかの教育を受け・・・
貸本屋のいくつかを訪問し本を買うことを強要された。
で、少ない購入資金を携えて出かけたのである。
遅い紹介になるが、私達、新人の給料は900円であった。
50年後の今にしても笑うような金額に
記憶違いでは?と疑うが・・・決して9000円では無かった気がする。
それでも衣食住に足り、夢を追う我々若造にとっては
十分な報酬だったのである。
知識に満ちた同僚達と共に
独特なオーラを放つ、いくつかの出版社を訪ねた。
社長が居たりもした。
同僚から薦められた本を買えるだけ買った。
商業誌しか知らなかった私を感動させる・・・
数々の作品群との出会いだった。
山本まさはる。みやはら啓一。みやわき心太郎。辰巳ヨシヒロ。
五十嵐幸吉。楠 勝平。沼田清・・・その他
初対面の知らなかった作家陣がキラ星のごとく輝いていた。
(つづく)
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