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『青写真の日々に』#シロクマ文芸部


青写真の大きな図面に
河川敷の詳細を描き入れるアルバイトをしたのは
高校生の夏休みの時だった。

地方公務員の父の職場で
それこそ公務員さながらに出勤する毎日だった。

静かな職場だった。

公務員の仕事が
こんなに楽なのだろうかと思うほどに
追われる景色がなかった。

そんな静かな作業場で
高校生だった自分は製図作業をしていた。

河川の開発予定の作業図を製図するのである。
父の職場でなかったら
高校生風情にできる仕事ではないことに感謝しつつ
日々に精を込めて仕事をこなした。

☆☆☆☆


職場に優しいお姉さんがいた。
笑顔が素敵で
職場を明るく染める存在だったと思う。


そんな彼女の噂が・・・
職場の内緒の話として耳に入ってきた。

アルバイトを終えたあとだったのが救いだった。


職場の数人と関係を持ち、退職したのだという。

高校生だった自分には関わりのない世界に思えたが・・・
彼女の笑顔に、どこか哀しさを感じた理由を知った気がした。

☆☆☆☆


そんな彼女の笑顔は
感光されないままの青写真のように
永い年月が過ぎた今でも
遠い風景の記憶の片隅に残されて・・・


【了】

*今では実務的に使われることの無くなった《青写真》ですが、昭和の頃にはあらゆる分野の製図作業で主流だった複写技術でした。
今は《コピー》と呼ばれる複写技術も、《青写真》では現像液との化学反応でトレーシングペーパーに製図された主線が【感光紙】に印刷されました。
コピーではなく《リコピー》と呼ばれていました。
本文は、リコピーされた青写真にさらに描き入れる様子です。


こちらに参加させて頂きました。
*「青写真」から始まる小説・詩歌・エッセイ
締切は2/4(日)23:59。

#シロクマ文芸部


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