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時代の片隅で消えゆく孤高の技・・・例え需要の欠片がなくても☆


*マンガではなく『漫画』と呼ばれていた時代・・・

当方は漫画を仕事にしていました。当然、プロになるための修行の時代があって、師匠はそれまで日本で一番絵が上手いと謂われていた桑田次郎でした。和式の机を並べた仕事場に名を借りた戦場でした。

戦場で向かう原稿に表現されるのは当然【絵】ですが、そこには無限の世界が存在していました。様々な技術が武器となって戦いの場に向かいました。


【星空と侮るなかれ】

桑田次郎のアシスタントだった私(20歳)には、下描きと顔のペン入れを終えた原稿が手渡されます。その先の全てのペン入れが仕事でしたが、そのアシは、ただ素直に受け入れる輩ではありませんでした。

キャラクターや人物には先生流のタッチがありますから従わなければなりません。反抗は許されません。それでも背景に関しては、やや自由の余地があり、その無謀な試みに時折、先生を驚かせていました。

当時の先生の作品には宇宙を舞台にしたものも多く、「宇宙と星空」として渡された白くて広大な原稿の空間は・・・自由な宇宙そのものでした。
当然、アシ(私)の出番です!(違!笑)

漫画界における星空の表現は、誰もがイメージするように黒い空間に大小の星々が散りばめられていて・・・それ以上でも以下でもなく表現は限定されています。技術的には黒いベタにポスターカラーのホワイトの点々を描き入れればいいのです。漫画家によって変わる程の技法はありませんでした。

「ここは宇宙ですので自由にお願いします。」

自由ならば・・・と、枷を解かれたアシのイメージは宇宙に飛び立ちます!
当然ながら誰もが描く平凡な宇宙など描く気はありません。
その方法を模索します・・・!

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アシが描き終えた原稿を目にした先生の眼が点となり(たぶん?)
時間が止まります☆  暫時の沈黙の後にアシに向かって一言・・・

「いいですね! これ、どうやって描いたんですか?」


そこには今まで先生自身がホワイトで描き入れていた点々の星々とは
一線を画す世界が広がっていたのです。


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【孤高の技】

アシ(私)が発見したその技法は
当時の漫画界において唯一のものだったと思います。
他に見かけることもないままにアナログの時代は終焉を迎えましたが、
誰にも伝えないままに忘却のひとつとして放置する寂しさも感じつつ、
需要がないにせよ遺しておこうか・・・と、ふと思ったのです。

さぁ、これからがアシ(私)の無謀自慢話です。(笑)
日本で一番絵の上手い漫画家と言われた桑田先生がアシに
その技法を聴きました。
アシは丁寧に伝達します。先生は聴くままに再現を試みます・・・

でも、先生の試みは徒労に終わりました。
アシ同様の技術を再現できることなく、結果・・・弾く技法を含め
以前のままのボテボテ点々の星空を描き続けたのでした。


さぁ、ここまで書いた以上はその技術を書かない訳にはいきません。
以下に書き残しますが、デジタル・A I が主流の今。実践する方は
ほぼ皆無と思われますのでお見逃し・お聴き流しくださいませ☆

ありがとうございました。


*この先は、かなりマニアックな技法の世界となりますので
興味を持たれた方のみ、お進みください。


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*昭和の漫画界の片隅で燦然と輝いた星空☆


漫画の世界での星空の表現はほぼ限定されていました。
黒ベタで塗られた画面に、白(ホワイト)の点を描き入れるだけです。
主に筆が使われますが、場合によっては筆を弾く方法で広い面積に
一気に描き入れる方法もあります。その方法は技法とも呼べないレベルの
画一的なものでしたが、アシ(私)の辿り着いた方法は一味、違いました。

桑田次郎門下のペンの技術も特異なもので『無音流』とも呼ばれる特殊な技術ですが、アシの見出した【星空】の技術も、その世界の奥義として残したいレベルの特殊なものです。



それでは、具体的な方法を解説させていただきます。

用意するものはまず、腰の部分を崩していない面相筆。
そしてペン軸に装着されたキレイなペン先。
(Gぺんでも可ですが、カブラペンがお勧めです)。

星に使う絵具・白のポスターカラー。
(ギターのポスターカラーが最適でしたが残念なことに製造中止に
なったようです。今は、他のメーカーのものでよいと思います)

ポスターカラーの濃度を調節したり、筆を洗う際の水容器。

そして創造すべく宇宙のひな型・・・暗黒の画面です。


〇まずは出航前の練習が必要です。

*面相筆を直接、ポスターカラーに付けるのではなく、目的によって
ポスターカラーの濃度を選ばなければなりません。
これは作業中にも度々、変化を加えます。
小さな容器に適量を取り出しておくのがお勧めですが、慣れてくると
筆先に付けた水分量で調節することもできます。

*まずは暗黒の空間に遠い景色の星々を散りばめましょう。
既存の技術には無かった方法です。この方法を使うことで、暗黒の空間に
ポチポチと点在する星の表現から、ファンタジーな世界が誕生します。

その世界は描画者の感性に委ねるものですが、暗黒宇宙に奇跡が訪れます☆


『ウルトラマンA』より。 https://note.com/kazeno001/m/m2d71ae9e9fcd


*遠景の小さな星雲の表現

面相筆の筆先にポスターカラーを付けるのですが、ここから技術が必要です。ポスターカラー少なく水分量はやや多め。ただし、筆先が滴る程の
量ではなく、全体の水分量は極力・・少な目が基本です
(えっ、これで? と思うくらいにポスターカラーと水分量は少なく・・・
霧粒になるまで調節)。

穂先は少しバラけていた方がいいかもしれません。

「噴霧するように弾くことなんか出来ないじゃん?!」と
最初に躓くと思いますが大丈夫。穂先、ポスターカラの量、水分量と
向き合い、試行錯誤を繰り返せば必ず《開眼☆》する時が来ます。
そうなると楽しいですよ?(笑)

(*指先で面相筆の穂先を整えながら、ポスターカラーの付いた水分が
無くなるくらいをイメージしてください。
微かに水分と白を感じるレベルの穂先が、極小に噴霧される星群の
武器となります。ここからがスタートです。
バランスを考えながら下地の星雲を配置した後に・・・少しずつ星の大きさを増す作業となります。)


筆を弾く目的で一方の手にペン軸のペン先を受け皿として構えます。
(カブラペンの利用する部分はお腹の<ヘリ>の一点のみです。)

ペン先を利用して筆を弾く☆
この方法はすでに多くの人が実践している技術ですが、その方法ですと
場合によっては飛沫に勢いがついて<飛散形>となり、銀河や雲海を
表現する際にあり得ない《流れ星》宇宙群に変貌してしまいます。


【星空の奥義】


①面相筆を垂直に立てるべし。
(当然、宇宙画面とペン先は水平である)

②暗黒の画面にペン先を近づけるべし。
(画面に近い程に小さな点となる)

③ペン先の表の一点を目指し、面相筆の筆先を垂直に
振り下ろすべし。

(筆先の一点がペンのヘリの一点を振り抜く感じ)

④星の一点は画面に近い程に小さく…
画面から離れるごとにその範囲と点の大きさを増すと知るべし。

⑤さらに近景の星の大きさを表現する際には
ペン先を画面から距離を置き、筆のポスターカラーの濃度を増して
筆に染みる水分量も・・やや増すべし。

⑥さらに近景の星においては大きく画面から離れて
⑤の作業をさらに追加すべし。

(この時には横移動の弾き方も可で、天空から大粒の雨を降らすイメージで。この場合、面相筆ではなく、もっと太い筆をお勧め)
*この作業は手描きをお勧めします。

⑦以上・・・心して研鑽、修行すべし。

(*おまけ知識・・細かい星の場合、
受けるペン先を表にして、筆の水分をペン先に溜めた状態で、
ほぼ水分の抜けた筆先を使う方法もあります。ペン先に溜めた白を
幾度も使う感覚です)

*どうか・・・《星空専用筆》として一本。育て上げてください☆


さて、基本の星空表現法でしたが、大気を介在した地上から見る星の場合、幾つかの星に光芒線を加えると、さらに美しさが増します。



いかがでしたでしょうか。
宇宙の星としては、実像よりイメージの美しさを優先した表現法です。
今更、試みる方もおられないとは思いますが、知られざる技法として
紹介させていただきました。


〇おまけ

【血吹雪】の表現


これは多くの方が劇画等において実践されてきた技法です。
目的によって小技も必要になります。

目的地を目掛けて・・・筆先に必要量に墨を含ませ、口を近づけて
プッ!》と息を吹きかけるのです。

吹き付ける距離・角度・方向など、目的によって使い分けます。
モノクロ画面での血吹雪。

ホワイトによる吹雪・水飛沫等にも活用できます。

『春陽』より。 https://note.com/kazeno001/n/nb1281ef4761f?magazine_key=mb1aea71b4541


令和における使い道は実践される方のみぞ知る・・・です。(笑)

長々とお付き合い、ありがとうございました。😊









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