『ブラームスが・・・』月めくり #シロクマ文芸部
*遠い日の
月めくりのカレンダーだったのだと、勝手にイメージしています。
そのエピソードを聞いたのは、とある分野の大御所の先生と机を並べて
仕事中の雑談の中・・・仄かに懐かしむ表情で。
今からもう50年も昔の話です。
大御所とはいえ、当時の先生の年齢でさえ30代。 まだまだお若い頃のことです。ご結婚はされていたものの、所謂《女性》に、人生を費やすかのように御執心な方でした。なのでその御経験も豊富で、数多の体験談を
机を並べた仕事中の私が初心のままに助手の宿命として逃げようもなくお聞きすることになったのでした。
とある分野でのヒット作に収入にも恵まれていた彼(先生のこと)は先に
お示しした通り女性分野の開拓にもご執心で、当時は順法でもあった《赤線・青線》が健在であったことを好として10代でありながら通われていたのは当然。20歳を迎える頃にはその経験数が300名にも達せられていたとの御自慢話でした。
そんな経験を踏まえた上で《ナンパ》なる所業にもご熱心で、真摯に取り組む仕事に勝るとも劣らぬ真摯で紳士に? 邁進されていたご様子でした。
・・・と、つまりは仕事中の隣の場にいた当時の初心な若者だった自分があれこれと聞かされていたわけです。何という・・・作業BGM?!
(誤解されると困りますが、先生との会話の中心が上のごとくの内容が主・・・だったのではなく、数ある分野のほんの一部であったことを弁明させてください。笑)
なので、事件レベルのインパクトのあるお話もあるのですが、それらは全て
割愛させていただき、今回は【月めくりカレンダー】に関わる小さなエピソードを・・・ふと、思い出したので書かせていただきます。
先生の数々の逸話に比して、なんとも細やかな出来事ですが。
☆☆☆
日々を仕事と、仕事明けの遊びに人生を捧げる彼(既婚)にも、
部屋をお世話していた愛すべく女性がいたそうです。
ある日。彼が久々にその女性の部屋に訪れると、その女性は嬉しそうに出迎え、おもてなしにご執心だったそうです。
彼女が手を込めた料理を口に運びながら、壁にかかった【カレンダー】に
一か所だけ印が記入されていたのが気になり・・・
「あの印は何だ?」と聞いたそうです。
「貴方が・・・居らした日ですよ?」と彼女が答えたそうです。
半月も前の日付け・・・?
その時になって初めて、自分が稀にしか彼女の許に訪れていないことを
認識したそうです。 反省もしたそうです。
☆☆☆
そんな彼女との別離となった日の出来事です。
その日も、仕事が忙しかったこともあり久々に彼女の部屋に訪れ、反応がないので合鍵でドアを開けると、彼が買って与えたレコードプレイヤーからのレコードの曲が流れていたそうです。訝しむままに居間に入ると・・・・?!
一面が血の海に・・・!!?
直ぐに救急車を呼んで、彼女の命にも別状はなかったそうですが
彼に気が付いた彼女がうわ言のように言っていたそうです。
「ブラームスが・・・・ブラームスが・・・・・・?!!」
☆☆☆
そんな話が何故か自分の心の片隅に刻まれたまま。
微笑むように話されていたあの頃からも悠久の月日が流れ・・・
三年前にその先生も別の世界に旅立たれました。合掌☆
ブラームスも・・・謎のままに。
【endless】
(1310字)
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