
『 取材日に 』やせたガールの日常 #青ブラ文学部
二作目、投稿させていただきます。😊
*取材日に
(八瀬田 我流(やせた がる)の日常)
上官から取材を受けよとの命が下った。
俺なんかに?と思ったが命令だから受けるしかない。
自衛隊・戦闘機パイロットの日常が取材テーマだそうだ。
やれやれ・・・
取材記者は女性だった。
美人だが痩せすぎている気がした。だが、露出した肌の部分や
運動神経を感じる動きから脆弱とは真逆な印象に変わった。
「今日の任務は貴女の取材です。何でもどうぞ。」
☆☆☆
取材の内容はパイロットを志した切っ掛け。日常の訓練の様子や
一日の生活のこと。スクランブル発進時のこと。国を守る思いとかを
聞かれた。許される範疇で全て答えた。
取材の質問を受けながら・・・俺は同時に あれこれ思い出していた。
☆☆☆☆☆
俺は父の顔を写真でしか知らない。
米兵のパイロットとして駐留していた日本の基地で通訳だった母と
出会ったのだという。二人は恋仲となり・・・
俺を身籠った頃に帰還命令が下り出産を控えた母を残して父は帰国した。
その時に男の子だったらと考えた俺の名前を母に手渡したそうだ。
母はその名前を見て、違和感を感じながらも
愛する人が考えたのだからと受け入れたそうだ。
その名前は『我流』(がる)。
だが、父の任務中の事故による殉職で母との結婚は叶わなかった。
俺は母の姓の許で育ち今に至る。
俺がパイロットを志したのにも、どこか亡き父との縁を感じている。
☆☆☆
基地にあるレストランのテーブルで、向かい合わせになった女性記者の
美しい顔につい見とれながら、その痩せた姿に・・・俺の中で忘れていた
数々のトラウマが甦った。
母の苗字・・・当然 俺もだが『八瀬田』である。 だから俺の名前は
八瀬田 我流。
(やせた がる)・・・俺の子供時代には予想のままに
「やせたがるな!」「やせたがーる!」「男のくせにガール!」とか
様々な言われようで揶揄された過去があるのだ。
だが、俺は自分の名前に悔いはない。
☆☆☆
女性記者に、ちょうど俺の日常を聞かれている時だった。
俺の口から思ってもいない失礼な言葉が飛び出してしまった・・・!
「あなたは《 やせたガール 》って
からかわれたことはありますか?」
「・・・・・・?!」
一瞬、怪訝な表情をした女性は少しの間の後に、名刺を取り出して・・・
自分の名前を指さしながら俺に見せた。
大太 衣子。
おおた・・・いこ? おおだいこ・・・?!
思わず吹きそうになるのを堪えた!
「後は・・・ご想像にお任せします。」
女性記者はそう言って、悪戯っぽい笑顔を向けた。
☆☆☆
「八瀬田 衣子(やせた いこ)・・・に、なってみます?」
思わず出た俺の更なる冗談にも、彼女は笑顔で応えてくれた。
二人の間に・・・
冗談ではない未来の予感が走った・・・!
【了】
*このお話はフィクションです。いかなる事実にも関係ありません。