『最後のマスカラ』② #毎週ショートショートnote
私はとある大手企業の I T 部門に籍を置いている。
中卒後にお世話になった社長への恩返しの意味もあったのだが、社長の体調不良もあってその息子が代を引き継ぐようになった。同時に部門のトップであった部長も交代となった。どうやら新社長の意思らしい。新体制となった会社から、私の解雇通告が突き付けられた。高学歴が自慢の新部長は私を見下すように下品な笑いを浮かべて言った。
「先代が何を思ったか、低学歴のキミが今まで雇われていたことに感謝するんだな! この先は高学歴な私の甥が引き継ぐから心配いらんよ!」
私はすぐに体調も回復しているという先代の社長とクビになった部長とも連絡を取り、翌日の会議室で現社長・部長、先代社長・部長。そして私の5人が集まった。
「どうしたんです?お父さんまで。先代の部長までがどうしました?
解雇されたことが御不満でもすでに決まったことです。もう覆りませんよ?」 まずは現社長から、続いて現部長からも言葉が発せられる。
「もしかして、私くんを解任したことですか? それでしたらご心配なく。
こんな中卒の低学歴を雇っていても会社の得にはなりません。後任にはすでに高学歴の人物も決まっておりますし。」
「キミが新しい部長だね? 会社が関わる全てのシステムを管理している私
くんを解任することがどういう意味を持つか知っていたのかね? それに
そもそも私くんの日本での最終学歴は中学だが、すでに中学生でありながら
条件を与えられた国際的なシステムコンクールで優勝している。」
「・・・えっ?」
「彼女はそのことで海外からの支援を受けて、専門分野での知識を得ながら大学だって卒業しています。私くんは例をみない天才児だったのです。あなたが後任にするという甥子さんは彼女よりも優れていると?」
「・・・?!」「・・・・!!」
前社長に重ねた先代部長の言葉に呆けている現社長・部長。
「私は海外からの支援を受けましたけど、本当にお世話になったのは
先代社長だと思っています。ですから少しでも恩返ししたいと会社に
在籍していました。私のシステムは必要ないと言われましたけど・・・
そのことでどうなるか理解していますか?」
「・・・そ、それくらいのシステムなら私の甥っ子が・・・!!」
「部長の甥子さんのレベルがどの程度のものかの情報は入ってます。
もし切り替えれば会社は倒産するでしょうね。」
「甥っ子は『雷神コーポレーション』のエリートだぞ!!
そんなシステムくらい・・・・!!!」
ここで私と前部長、先代社長までが吹き出してしまった。
「キミがいま名前を挙げた会社が誰のものか知ってるかね?」と先代社長。
「私くんがそこの社長だよ!」と、前部長。
「フアッ・・・??!!??」 愕然と呆けたままの現社長・部長。
「そもそも彼女が作ったシステムは彼女が特許を得たものだ。
それが使えなくなった時点でグループを含めた会社の全ての機能が
停止する! そのことがおわかりでしたか?!」と、とどめの前部長。
「 ・・・・・ ・・・・・・ 」 もはや呆けの彼方に逃亡した現社長・部長。
「お前たち無能の二人には即刻、会社を去ってもらう!
新社長にはここにいる前部長に就任してもらうつもりだ。」
「えっ?」と、前部長。そのことは聞いていなかったらしい。
「それでいいね? 私くん? キミにはこれまで通り、この会社に
籍を置いたままでいて欲しいが、、キミ次第だ。」
「はい。 これからもよろしくお願い致します。
社長には・・・私のお願いを聞いていただけて・・・
とても感謝しておりマスカラ!!」
『最後のマスカラ』
お粗末さまでした。
【了】
(1453字)
*最後のお題にたどり着かんがためのお話でした。
長々とお付き合い、ありがとうございました!
文字数過多も失礼しました。😅
*この物語はフィクションであり、実在の人物・出来事・場所
名称・事件等とは一切の関係がありません。
*こちらに参加させていただいてます。
今回のお題は 『最後のマスカラ』
裏お題が・・・『サイコの鶏唐』でした。
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