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青春漫画抄(昭和)⑧


*北海道浦幌高等学校・北海道十勝郡浦幌町にあった道立高等学校。 1952年(昭和27年)開校。2010年(平成22年) 閉校。。


*《浦幌高校》


ある日、吾妻がノートか何かに落書きしていた。
一面に・・・
人まがいの生物が絡み合った群像図のようなものを描いていた。
その時に私は確信していた。

( こいつは天才だ!)


「おまえ・・・プロになるの?」
「・・・・・・」 (小さい声で「ナルヨ・・・」と、聴こえた気も?)

いいかげんな返事で
もともとボケた顔をしていたが、表情も煮え切らなかった。
その日から私は彼を洗脳するように機会あるごとに命令した。

「必ずプロになれ! おまえなら必ずプロになれる!!」

「学校? 行きたい時に行って、帰りたい時に帰ればいい!」

「答案? 答なんかじゃなく、書きたいものを書けばいい! 
論文だろうが漫画だろうが何だっていい!

心を満足させるものを書くのが、テストの真髄だ!!」


とか何とか・・・☆

訳のわからない私の妄言にも、吾妻は次第に従うようになっていった。


前にも書いた私の部屋に遊びにくるようになって
彼とも友好度を深めていたのである。
私の部屋には悪ガキのような友人も出入りしていたので
部屋には酒瓶が転がり、時にはタバコの煙も充満していたが・・・
もとより換気の良い部屋なのでその点は問題なかった。(違!)


ある日の夜、集まった友人四人で、みんなで飲もう!という事になり
かつて私を追い出したA男の部屋に遊びに行く事になった。
(私とはそれなりに和解していた)
A男は私を追い出したことで、犯罪者になる機会を失ったようだ。

お金を持っていた男に安いウイスキーと
日本酒の一升瓶とつまみを買わせてA男の家に向かった。
今の時代とは違い、堂々としたものである。


*《吾妻卒倒!》


A男の部屋で彼を加えて5人。
まずはウイスキーをチビチビやっていたのだが
私と吾妻は悪魔の微笑みで目配せ・・・
そっと、話に華を咲かせている友人の輪から離れた。

気付かれないように未開封の一升瓶を手にして
私と吾妻は対面し・・・お互い、湯のみ茶碗を手にして
目でスタートの合図!!

交互に一気飲みで飲み交わし・・・
1分も持たずに一升瓶は空になっていた。

直後に吾妻は「酔った~!!」と、満面の笑みで卒倒! 


気付いた他の連中の呆れつつの怒号を背に
私は歩いて自分の部屋に帰って寝た。

二学期も後半の 晩秋の寒い夜だった。


そんな馬鹿騒ぎの夜の翌日・・・
学校に吾妻の姿は無かった。そして次の日も。

さすがにちょっと心配になって情報を仕入れたが
無事な事は確認された。


そしてさらに翌日、吾妻は無事に生還したのである。


急性アルコール中毒だったかとも思うが
今となっては時効とさせていただきたい。

(つづく)




1967年。浦幌高校・文化祭にて


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