9と10 #吞みながら書きました
近くを酔っ払いの大きな声が通りすぎる。この頃にしては珍しく外で泥酔しているような様子だった。フラフラと仲間と肩を組んで千鳥足で歩いていく姿にどこか懐かしさを感じてしまった。当面外食などが控えられている時期だったから私たちの行動も、もちろん一部の人達からは賛同をし得ないものだってことはわかってる。
「9パーって濃いよね?」
「何?お酒の話?」
ロングサイズの新しいパッケージのレモンサワーを駅前のコンビニで見つけた帰り道。公園のベンチに腰掛けて満月を眺める。大きな通りに面している割に、この時間は人も車の姿も少ない。
職場がいっしょで同僚たちに見つからないよう時間差でゲートをくぐる。
駅の車両はいつも別々で、同じ駅の地上へ出てすぐのコンビニ前が待ち合わせ場所になっていた。
「んーん、好きの度合い」
「それは低い方なんんじゃないの?」
今日は珍しく外灯の光よりも月が大きく強い光を放っていたように感じたから、少し寄り道をしてみようと切り出した。
この時期は、まだ少し寒く、桜の木にもわずかに膨らみが見え始めたころだった。
「そうかなぁ。だって頭の中で考えていることなんて普段の生活のことが100%に近いわけじゃない?」
「んー そう?」
「そうよ。お昼ご飯何にしようとか、次の仕事の予定はとか、休みの日に撮りためたビデオ見なきゃとか。洗濯物だって何時に干すか考えてるわけじゃない?明日の天気だって毎日のように気にしてるし」
「まあ、たしかに。でも最近は一緒にいるからその時間も少なくなったんじゃないの?そういう意味じゃなくて?」
「違うの。確かに二人で家事や予定を合わせることにもそのパーセンテージは変わったと思うの。良い意味でよ、もちろん」
「それなら50%は超えていてほしいけどなぁ」
「それは無いと言い切れる。だって現実的じゃないもの」
「どうして?」
「そんなに高い数値なら私はあなたの姿が見えなくなった時点で気が狂って死んでしまうわ。なぜなら生活以上のものをあなたに求めてしまっているわけだから」
「うーん。それもそうかもね。でも、せめて10%くらいあってもいいんじゃないかな?」
「そこが難しいところなのよ。10%の壁」
「何それ 笑」
「桁が増えるのよ、そんな簡単なことじゃないわ」
「そんなことないでしょ。だって現に僕は…」
「言わなくていいわよ。だいたいわかってるから」
「え?そう?気にならない?」
「何パーセントかなんて言わなくていいわ」
「どうして?気にならないの?」
「そんなこと聞いたって一時的な気休めにしかならないでしょう。だから聞きたくない」
「でも僕は気になるな。どれくらいなのか。」
「とても現実的な数字よ」
「10%もないような?」
「そう。でも限りなく10に近い数字」
「でもどうあっても10にはなれない?」
「それはあなた次第ね」
「どうすればなれるのかな」
「そんなになりたいの?」
「そりゃあ、少なくとも君の中の多くを占めれるのであれば、悪い気はしないし、むしろ光栄なことだよ」
「光栄?」
「いや、ちょっと違うかな。照れくさいような、誇らしいものかも」
「それはどうして?」
「だって、僕のスキが少なからず君に届いているってことだろ?それはとても勇気がいることだったし、同時に幻のようなものだからさ」
「現実味がないっていいたいの?」
「そうだね。何もせめてるわけじゃないよ。そうじゃなくて、いつも君という存在をつかみきれないぼくがいるからなんだ」
「それは興味深いわね。どうしてつかみきれないの?」
「まぶしいからだよ。気づいていないだろうけど」
「何それ 笑」
「なんでもないよ。今の言葉は忘れて」
「忘れないわ。まぶしいなんて言われたことないもの。気になるじゃない」
「確かにいったことないけど。それでも大したことじゃない」
「私はあなたにとってたいしたことじゃないってこと?」
「違うよ!そーいう意味じゃない。」
「じゃあどういう意味か知りたいな」
「好きってことだよ」
彼女のシャンプーの香りが鼻を包む
「今10%になったよ」