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バファリンくらいの優しさが欲しい

指先から新しいシャンプーの香り。指がそこにあることに気づいたのは何分か経ってから。

目の前の細く、小さな手は。いつも握ることをためらわせる。清潔じゃなきゃいけないような気がして。そんなほんの少しの緊張の糸に気づくと、ふみとどませるには十分で。

夢の中へゆっくりと溶けていくような、うっすらと明るい部屋であなたの息づかいに気づく。

かわききらない髪のつやめきが、たまらなく顔をうずめたくする。

白いキャンバスに毎夜繰り返されるその姿に一つとして同じものはなく、ただあなたが夢の中でさえ、何かにおびえる必要がないように、穏やかに過ごせることを、祈るばかり。


秋の夜。肌寒さ、毛布をかけて、並ぶ。

儀式のように、これからくる明日を待つ

灯りを消すと月明かりに部屋が照らされ始める

視界は徐々に短くなり、隣にいるあなたとも狭くなる。カラダとココロの距離はゼロになる。

こうなると、明日がこなくても、明日がきても。どちらでも構わない。



夜中に目覚めると、あなたの無意識のダンスでまたしても肌寒い。

かけなおして、また同じ気持ちで瞼を閉じる。

気づくのが遅かったせいであなたが風邪をひくかもと頭によぎったが、眠気に負けてそうならぬよう祈ることを忘れてしまった。

こんな時せめて「私がいれば大丈夫。」と胸を張っていえるほどの。…そうだな、

例えば、バファリンくらいの優しさがほしい

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さとう じゅんいち
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