保育士を大事にしないとどうなるの?
私は保育士を約9年続けて来ました。
7年間は認定こども園で、2年間は小規模保育園です。
7年間認定こども園で働いた時のお給料が低く、毎日12時間会社にいて(サービス残業)、休憩無し、制作材料は実費。
そこから転職した小規模保育園では残業もなし、手当が充実、お昼休憩もしっかりあるし、なによりお給料アップ!
というお話でしたね。
気になる方はぜひ見てみてくださいね↓↓
さて、今回は前回小規模保育園の話の続きです。
お給料が大幅アップして大喜び!
お昼休憩は別室でとれるし、残業はほどんどありませんでした。
連絡帳や企画書、月案・週案はすべてPC入力。
やりたいと思った活動に使う材料費はしっかり会社が出してくれました。
そんな素敵な保育園をわずか2年で退職することになるとは…。
入社後半年ほどたった頃に言われていた話ですが、
子どもを定員いっぱい預かっても赤字という現状でした。
入社時点でホワイトだと思っていた会社は
赤字だらけの傾いた職場だったということです。
これは入ってみないとわからない…。
そこで会社がとった行動は住宅手当の廃止、正社員の削減、保育士泣かせの一時預かり保育でした。
現在住宅手当がない会社は多いと思います。
むしろ住宅手当がある方が珍しいですよね。
しかし、保育士の基本給18万だったこの職場。
住宅手当は1万円。
1万円がなくなるというのは、なかなか厳しい…。
次に行うことにしたのは正社員の削減。
正社員を雇うということは、質はあがりますが
会社は支払う金額が増えますよね。
「少しずつ正社員を減らしていき、パート従業員を増やしていきますよ。」
と言っていた会社ですが、実際はそうではありませんでした。
たまたま家庭の事情で正社員1人、パート従業員1人退職していきました。
これでスタッフは6名。
子どもは変わらず14名。
0歳児が2名、1歳児が7名、2歳児が6名。
国の配置基準を考えると
0歳は3人に対して保育士1名。
1・2歳は6人に対して保育士1名。
つまり、この保育園は3人いれば大丈夫と国は言っているわけです。
いやいや…そんなわけあるかーい!
外に行くことはまず困難。
室内にいたとしても、1人が「と、トイレに…」なんて抜けたら
0~2歳児14人を2人の保育士で見るんですよ。
掃除は誰がするの?
嘔吐をした子がいたら子どもの看病、掃除は誰がするの?
ミルクの準備をする人は?
お迎えに来た保護者の方への対応は?
そう、すべて保育士がするんです。
子どもの定員に合わせて保育士を配置しただけでは、保育園の1日を安全に運営することは絶対にできないんです!
少し話はそれましたが、保育士の数が6名になりました。
なんだ、まだ大丈夫じゃない?と思いますよね。
内1名は園長先生です。
園長先生は配置に含まれませんでした。
施設運営をする人は保育に入ってはいけないと言われていたからです。
さぁ、これで保育スタッフは5名になりました。
新しくスタッフを雇ってほしい!そう思っていましたが
会社は人を雇わなかったのです…。
そう、お金が無いから。
現場は毎日戦争になりました。
5人の先生が毎日出勤するわけではありません。
お休みの日もありますよね。
ということは、1日4人で回さないといけない日が多くなったのです。
安全性を考えながら室内で遊ぶチームと外にお散歩に行くチームにわけ、配置基準を満たしながら1日1日を回していく日々。
その中でコロナの感染を防ぐために
壁や玩具の消毒は入念に…。
毎日の仕事量の負担が増えていきました。
ゆったりとした保育が魅力だった園。
それはどこにいったのやら…。
それでもなんとか先生たちとコミュニケーションをとり、その年度を終わらせることができ、素直で優しい子どもたちに成長しました。
現場のスタッフがいい人たちばかりだったのが唯一救いでした。
来年度もこの保育園、と思っていたら
まさかの異動・・・
異動先の保育園で何が起きていたか。
それは、保育士泣かせの一時あずかり事業でした。
異動先の保育園は19人定員のところでした。
こちらも小規模保育園でしたが、去年いた先生から話を聞くと毎日戦争だったと…。
19人の子どもたちを見るのも精一杯でしたが、そこに毎日4人は来る一時預かり事業。0~2歳児なら誰でもお預かりできました。
ですので、1日23名となるのです。
それに対して保育士は園長先生を抜いて8名。
多いように感じますが、こちらもお休みの先生がいることを考えると
1日7名のスタッフが0~2歳児の23名を見ていたのです。
ハードな毎日だったと言っていました。
そして私が異動する前に5名のスタッフが辞めていきました。
ゆったり保育がしたかっただけなのに…。とため息交じりにみんなが話していました。
じゃあ、なぜ会社が現場が疲弊している中、一時預かり事業をしていたか。
それは「地域貢献」という名の「お金稼ぎ」です。
そのために、保育士は毎日精神・体力を削り死に物狂いで園を運営していました。
同じ法人内なのに、こんなに園によって中身が違うものかと
私自身ぞっとしました。
そして、大量の退職者が出たために私は異動させられたわけです。
他にも異動になった先生がいましたが、ちゃんと異動していいか面接があったのに対し、私は面接なしで唐突に異動宣告。
数合わせのためでしょう。
今でも根に持っています(笑)
異動した先での保育園はまさに地獄でした。
去年、しっかりと保育士が子どもと向き合えなかった事で子どもたちへの影響の大きさを目の当たりにしました。
2歳児でも自分の気持ちを言葉にできず、手が出る、噛みつくのオンパレード。
そして愛情が足りず抱っこを求める子どもたち。
好きだった先生たちが大量にいなくなってしまった現実に戸惑う子どもたち。
そんな中で、去年この園に在籍していたスタッフは2名のみ。
そして新しく入社した2名の保育士と1名の看護師。
そこに異動した私を含めた保育士2名。
新しい組織でスタートせざるを得ないこの状況。
大変な中で減っていく給料。
何が楽しくてこの仕事をしているのか、もうわからなくなっていきました。
子どもも可哀想。
保護者も可哀想。
先生たちも可哀想。
ギスギスした環境だからこそ、先生たちの口調が荒くなることも。
新しく入ってきた年配の先生から怒鳴られることもありました。
そんなこんなで、私はこの園で2ヵ月しかもたず退職。
会社が保育士を大切にしないとどうなるのか、
身をもって体験しました。
小規模保育園は待機児童をなくすために生まれた保育園です。
どんどん増えていった結果、待機児童は0名になっている都道府県が増えてきましたね。
そして現在は増えすぎてしまった小規模保育園はもういらなくなってきているのです。
それでもなんとか運営していかなくてはと翻弄する小規模保育園の実態。
もちろん、私が勤めた保育園よりも
もっと良い保育園は沢山あるかと思います。
ここで私が言いたいのは、保育士を大切にしてほしいということです。
会社都合で保育士をたらい回しにしないでほしい。
命を守るお仕事をしているんです。
子どもたちにとって、1番大人を頼れる、素直に甘えられる環境を提供しなくてはいけないんです。
責任感のある保育士さん達が常に思っていることだと思います。
どうか、どうか切実に、
保育士さん達が何年も続けたいと思える環境になることを心から祈っています。