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小屋

2020年11月23日(月・祝) 午前5:00
嫌な寝覚めだった
せっかくの休みでゆっくり寝るつもりだったのに
早く目覚めたから?
いや違う…
嫌な夢を見たからだ
この1ヶ月の間に同じ小屋の夢を
少なくとも3度は見た
毎回状況は違えど小屋は同一のものと分かった
こういう夢のことを"成長系の夢"と呼んでいるが
これ系の夢はあまりいいことはない


1回目
楽器の練習をするためにレンタルスペースを借りた
片側1車線の道路沿いに広めの駐車場があり
奥の方にポツンと小屋が立っていた
駐車場の片隅には小さなプレハブ小屋があり
どうやらそのプレハブが受付のようだ
その受付には優しそうなお爺さんが座っていた
諸々の手続きをして注意事項を聞いた
よくある決まり文句のようで僕は聞き流していた
少し雑談を交わし
漸く小屋の鍵とマイクとケーブルを借りた

小屋は木造で可愛らしい感じがした
壁にガラスがはめてあるので
親切にも外からは丸見えだった
「おいおい,これじゃまるで見せ物じゃないか…」
少しうんざりし,暫く外から眺めていた
広さは3帖くらいだろうか
奥には収納スペースが見える
…こうしていても仕方がない
僕は諦めて中に入ることにした

中はとてもきれいで新築のようだった
床はフローリングになっていて壁際には
よくある茶色の長机が置いてある
それと家庭用の小さな音楽機材
(アンプとミキサー)が設置されていた
奥には襖がある
どうやら押入れのようだ
和洋折衷に若干の違和感を覚えたがそれも悪くない
何よりもきれいなので
いい練習ができそうな気がした
予想通り2時間いい練習ができた

忘れ物チェックをして部屋の状態を元通りにした
といってもほとんど何も触っていないが
お爺さんの決まり文句に従った
ドアに鍵をかけて無事に小屋を出た
数歩進んだところで何気なく振り返った

そこには最初に見た光景が広がっている
広さは3帖くらいで奥に収納スペースが見えた
上下に仕切られているが物はなく閑散としている
「あれっ?襖なんて開けたかな?」
元通りにしないとお爺さんに怒られるので
ぐずる足を引っ張って小屋に戻った
中に入ると最初に見た光景だった
フローリングの床に長机
小さな機材に,襖…

襖は確かに閉まっている
何かは分からないが
和風の絵が描かれた襖
嫌な予感がした

思い起こせば
最初に入った時も一瞬違和感に包まれた
何となく嫌な気になったが
その後の2時間を考えてか
正常性バイアスが働いたのだ
和洋折衷のせいにしたけど
確かに存在を感じたそれだった

改めて襖の方を見ると
襖が開いていた
正確には透けているようだった
僕ははっきりと恐怖を感じた
押入れの上段
ゆっくりとその姿を現した

想像通りの悪魔の出立ち
とても友好的には見えなかった
その悪魔が言った「 … 」
何を言ったのかは感じ取れた
僕は落とした腰を拾い上げ
ロボットのように後退りした
外に出て暴れ狂う腕でどうにか鍵をかけた

何故手が震えているのか
僕は分からなかった
不思議に思っているとお爺さんが歩み寄ってきた
「言った通りにしなかったのかね?」
僕はキョトンとした後,恐怖が甦った
断片的な記憶たちが糸で結ばれて
その糸がぴんと張ったと同時に繋がった
「言った…通り…?」
僕が聞き返すと,お爺さんはやや呆れた様子で
「やれやれ,だからあれだけ念を押したのに」
「後のことはわしに任せていいから」
「お主は何もなかった」
「そのまま忘れて帰るんじゃ」
僕はそれに従い,忘れて帰ることにした


2回目
僕は友人Aとツーリングしていた
比較的緩やかな山で
バイク初心者でも走りやすいという理由から
この山を選んだ
路面は少し湿ってはいたが
絵に描いたような緑と青が気持ちよかった

峠を越えて下っていると
Aがどこかで休憩したいと言った
休憩できる場所なんて見当たらなかったので
よさそうな場所があれば立ち寄ろうと言った

そんな矢先,小屋は突然現れた
ちょうどバイク2台分の駐車スペースがあった
小屋は木造で壁にガラスがはめてあり
外からは丸見えだった
広さは3帖くらいで奥に収納スペースが見えた
ちょうどいい,なんて言いながら
僕たちは中に入った…

正直ここは記憶がかなり断片化されていて
ほとんど思い出せない
たぶん暫く普通に休憩していたと思う
で,途中Aが襖を開けたんだと思う
そこで記憶がまた甦って悪魔が現れて…
どうにかこうにか小屋から逃げたような
今はこれ以上思い出せない


3回目 (今日)
S川の堤防でサークルの旧友Bと出会った
暫く傘を並べながら会話した
10分ほどして,僕はその場を後にした
国道沿いの道を自転車で走った
傘を差していたので下り坂が少し怖かった
そのまま真っ直ぐ走り2度目の坂を下りた辺りに
その小屋はあった

小屋の前の小さなスペースに自転車を停めた
中には不思議な刀が幾つか飾ってあり
6人くらいの団体さんが鑑賞していた
かなり狭かったが僕も小屋に入ることにした
どうやら家族連れのようで
子供がはしゃぎ回っていた
それも無理はない
そこに展示してある刀は
どれもこれも独特のもので
僕も魅了されていた

程なくして家族連れが小屋を後にした
一人だけになると意外と広く感じた
作品を一つ一つ眺めながら
一番奥側に飾ってある一際目立つ刀を手に持った
その刀は鞘だけで刃がなかった
不思議だなと眺めていると
鞘についている釦に触れてしまった

すると,鞘から刃が飛び出した
しかもその刃はビームセイバーで青白く光っていた
その刃が6本ほど鞘から飛び出し眩い光を放った
その光に気付いてさっきの男の子が戻ってきた
男の子はその仕掛けに気付いていなかったようで
目を丸くしてその刀を見ていた
あまりにも興味津々な様子だったので
僕はその刀を彼に預けた
嬉しそうに刀を手にしている

その瞬間 "時" が進んだ
小屋の中には僕と友人Cだけで
他には何もなかった
襖以外には…
二人とも飛ばされてきたみたいで
状況がいまいち掴めない
外は薄暗かった
もう嫌な予感しかしない

すると襖が開き悪魔が姿を現した
Cには見えていないようだった
悪魔は声無き声で語りかけてきた
分からない内容もあったが
何やら生贄を探しているとのことだった
心当たりがなかったので丁重にお断りをし
Cを引き摺りながら小屋を出た

Cには見えても聞こえてもいないようだったが
その恐怖だけは同量得ていたみたいだ
ほっとしたのも束の間
僕は忘れ物に気づいた
マイクとケーブル
あと電気も消し忘れている
しかし,もうあそこには戻れない
戻りたくない

僕はその役をCにお願いすることにした
泣く泣く…だ
当然Cも嫌がったが
最後には引き受けてくれた
程なくしてCが無事戻ってきた
マイクとケーブルを渡しながら尋ねてきた
「これは一体何なんだ!?」
僕にもよく分からなかったので答えようがなかった
するとその時,声無き声が
「次は生贄を連れてこい,さもなくば…」
続きは聞かなくても分かった

僕は生贄としてBを連れて行こうと思った
自分の霊力では
太刀打ちできないことは明らかだった
その点,Bは霊力も強いので
何とかできるかもと思ったからだ…



ここで目が覚めた
本来であればこのまま二度寝するだろう
しかし,僕の中の何かが書けと申している
なので仕方なくこうして記憶を辿りながら
内容を書き留めている
そしてその予感は正しかった
書いていて分かったことがある


それは生贄の謎

今の今まで分からなかったが
生贄という文字を書いて思い出したことがある
呪い返し対策として
死神に生贄を差し出したことを
どうやらその生贄が見つからないようだ
顔と名前の情報は与えたのに
そのためにこうして夢の世界
パラレルワールドを通じて
僕に聞いてきているのだと
そして,その生贄はBではなくT.Yなのだ
勘違いしているあっちの世界の自分に
この事実が伝わらなければ…


夢であれと願う我

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