Doors 第4章 〜 Joker
何故みんなと少しだけ違っているだけなのにこんなに邪険にされるんだろう.それがババ抜きを嫌いな理由の一つだ.ただのカード揃えなのにjokerを避けるのにとても興奮している.僕はその光景がいじめのそれのようでとても異様に感じたし,悲しく苦くもあった.
勝利のために平然と嘘をつき子供を騙して精神的にズタボロに殴りつける.勝利とは人を蹴落として掴むものではなく,自らの脚力で飛び上がるものだと考えていた僕の価値観と真逆なそのゲーム.好きになれる訳がない.そんな薄汚れた勝利がほしいのなら幾らでもくれてやると,僕は騙されたフリをして負けていた.針金のように曲がりくねった価値観に溺れている大人等が気持ち悪いとさえ感じた.今ではどちらが曲がっているのか分からないけれども.
他のゲームでは最高の力を発揮するjoker.その潜在能力の高さに僕は魅了された.そのjokerがババ抜きでは厄介者にされる.そんなjokerの気持ちが僕にはよく分かる.そうして自分のことをJokerだと思うようになり,同じ悩みを持つ友になった.
この苦しみは自分一人でいい.後世に残すべきではない.どうせ自分が間違っているのだろう.ここで終わるのがいい.そう考えるようになった僕は愛を倉庫に閉じ込めた.
そんな僕にもリアルな親友は存在した.大変ありがたいことに.もちろん僕は親友のことを大切にした.けれどもそこには一つ悲しい法則が存在した.『親友は必ず遠くへ行く』この法則に間違いはなかった.この悲しみから逃れるため,僕は倉庫に閉じこもるようになった.