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Doors 第12章 〜 逃避

 リハビリに苦しんでいる時,高校の時の親友と久しぶりに会いました.頭はでかいがイケメンで賢くて尊敬していたそんな彼からマルチビジネスを勧められました.無知で馬鹿だった僕は特に気にせずついて行くことに.アルバイト再開のためのリハビリのような感覚だったのかもしれない.彼のようになりたくて必死に追いかけ,扉を開けたけど結果は…

 そうしてサークルからも居場所がなくなった僕は更に部屋に篭るようになりました.いつだって音楽は裏切らなかったから.いつだって一緒に泣いてくれたし笑ってくれた.もう音楽しか残っていないと思った.
 それに音の世界は美しかった.音には性別もないし善悪もないし裏切られることもない.「男らしく」という毒に怯えることなく生きていける世界だった.音になれたらどれだけ楽だろうか,そんなことを考えるようになった.
 そんな時,プロへの扉が現れた.条件は大学を辞めることだった.悩んだ結果,大学を捨てれなかった.怖かった.いつだって僕は弱い人間で,逃げることも易々と正当化していた.

 そして僕はスティックを捨てて鉛筆に握り変えた.毎日10時間以上勉強した.そんな生活を1年半続けて1年遅れで卒業できた.途中パニック障害に苦しみ,突然現れる死神への恐怖に打ちのめされそうになりながらも.ただ,勉学に勤しんでいたため就職活動はできずにそのまま進学することにした.いや,本当はただ就職活動から逃げたかっただけだった.勉強が好きになっていたのは嘘ではないが.

 国立の大学院に進学したものの,1年で退学した.大学卒業前の方が忙しく,大学院での生活に暇を持て余していた僕はバンド活動を始めた.そのバンドに可能性を感じたので,それにかけたいと思ったからだ.
 いや…ウソだ.バンド活動が軌道に乗りつつあったのは間違いない.でも本当の理由は,講義の内容は理解できていないのに成績だけでオール秀がつけられる評価方法だった.このままもう1年を費やして何の意味があるのか分からなくなり,それなら音楽に時間を費やしたいと考えた.
 …と自分に言い聞かせた.そう,これもウソだ.本当の本当はやっぱり就職活動から逃げたかったんだと思う.自分にとってこの扉は非常に重たいみたいだ.

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