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断言の引力

本来は今日が仕事納めなのだが、有休をあてる人が多いため、昨日"納会"が行われた。社内の広間で行われる立食形式のものだった。今年中途採用で入職した私は、まだお話したことがない方も多く、多少の居心地の悪さを感じていたが、自称「社交的な人見知り」の能力を使って、果敢に様々な人に声をかける作戦を試みた。

すると、以前からお話したいと思っていた方と話が盛り上がり、彼が所属する「漫画部」の勧誘を受けることとなった。

私の職場では、「部の発足」が流行っている。
現在、山部(登山部)・ゲーム部・軽音楽部が公認となっており、非公認のもので言えばカラオケ部・野球部・ゴルフ部・漫画部がある。

彼はその漫画部の副部長的存在だったらしく、話をしていたら漫画部部長もやってきた。そこで漫画部の魅力や、どんな漫画が好きかという話を一通りして、話題は漫画のアニメ化・実写化についての話になった。

すると部長は臨戦態勢になり、言葉が熱を帯び始めた。お察しの通り、彼の主張は「どうしてもアニメ化・実写化が許せない」ということ。

気持ちが分からないわけではない。
私は漫画に限らず小説でも、好きな作品であればアニメ化・実写化されたものも一応見てみようかなという気持ちになるが、実際に見てがっかりすることのほうが多い。もちろん「これはこれでよかった」と思える作品もあるのだが、大抵はイメージと違う部分があるものだ。

しかし、それはそれで当たり前のことだと思っている。100人いれば100通りの想像する声やテンポ・雰囲気などの「作品の世界観」があり、万人に理解される作品にすることは至難の業である。

そして、好きな作品であれば、その作者に対する敬意もあるし、原作を知らずに映像化されたものから、漫画や小説に興味が出て、新たなファンが増えるというのもいいかなと思える。

だが、部長は頑なだった。
何を言われてもアニメ化・実写化は見たくもないとの一点張り。しまいには「僕の世界の邪魔だけはさせない」という名言を繰り出してきた。

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私は何かを強く批判することに抵抗がある。いや、肯定も否定も断言するのが苦手なのだと感じる。このようなWeb上でなく、プライベートにおいても同様だ。自分の好き嫌いくらいはもちろん言うが、どんなに受け入れがたいことでも、受け入れる努力くらいはしたい。

断言が出来ないのは、他人の目を気にしすぎること、自分の思考に自信が持てないこと、断言するだけの情報を得ていないと思うことの3つが理由だと思っている。

こう並べてみると、全く魅力が見られない人物像だと思った。様々な文章を読んでいても、やはり強く惹かれる文章には、強い意志や自信が感じられる。

魅力的な文章を書けるようになりたい気持ちと、やはり断言は避けたい気持ちが入り混じる。

そして、断定的な文章だけが魅力的ということでもないと思うのだが「断言するだけの情報がない」という事実は改めるべきかと。

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風埜いろは
今後も有料記事を書くつもりはありません。いただきましたサポートは、創作活動(絵本・書道など)の費用に使用させていただきます。