万能薬「日にち薬」
「日にち薬(ひにちぐすり)」を聞いたことがあるだろうか。
小さい頃から両親や祖母に言われ続けたこの言葉は、どうやら方言らしい。
一昨日、退院後初めての出勤だったのだが、皆が心配して声をかけてくれる中、「もうあとは日にち薬なので」と言ったら、不思議そうな顔をされた。
毎日飲む薬のことかと思ったとのこと。
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日にち薬というのは、時間の問題で治るということだ。時間や日を追うごとに良くなり、月日の経過が薬の代わりになることである。
私は2週間前に手術をし、1週間前に退院をした。退院した日は歩くどころか起き上がることもやっとだったので、予定通り出勤できるか甚だ心配だった。
しかし、そんな心配とは裏腹に、体はみるみる回復している。毎日毎日出来ることが増え、4日も経てば通常の生活が遅れるまでに回復した。
薬は飲んでいない。
痛み止め飲み処方されているが、痛みがあるときに飲むものなので、日々の薬は服用していない。
体力がまだ戻ってない感覚があるが、これもまさに時間の問題だろう。
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日にち薬は、万能薬なのではないだろうか。
そして、体ではなく心の治療に適している薬だと思う。
生きていれば、嫌なことや悲しいこと・苦しいことから避けて通ることはできず、大なり小なりの心の痛みを抱えているのが人間だ。
そんな心の痛みを癒すのもまた、日にち薬なのではないか。
思春期に抱えた一世一代の大きな悩みだと思っていたものも、今振り返ればとてもちっぽけなものだったり。
なんなら、その「一世一代の大きな悩み」なんてものは毎年更新されていくものだったりする。
“Time cures all things.”という英語のことわざの通り、時は全てを癒してくれるのではないだろうか。
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現時点で悩みを抱えている人に
「大丈夫大丈夫、時間が解決してくれるよ」
「今がどんなに辛くても、笑えるようになる」
なんて、J-POPの安い歌詞みたいな言葉をかけたところでなんの意味もなく、どんなに相手を思いやっていても、「私はこんなに辛いのに分かってもらえない」と逆撫でするのが関の山だろう。
しかし、人から与えられるのではなく、常備薬として持ち歩くには大変効果的なはずだ。
10〜20代の悩みの多くは、日にち薬が癒してくれる。嘘だと思うなら、試しに1年待ってみてほしい。
そうすれば失わずに済んだ命があっただろう、と思うのです。